事前に聞いていた金額と、当日に目の前で出された金額が違う。
閉店の現場では、それほど珍しいことではありません。問題は金額が動いたこと自体ではなく、その場で決めてしまうことです。
しかも当日は、決めやすい条件が全部そろっています。トラックが来ている。明け渡しの日が迫っている。相手は待っている。この状況で出された数字は、落ち着いて比べられません。
まず、理由のある減額かどうかを分ける
金額が下がること自体は、正当な場合があります。事前の見積もりは、たいてい写真や型番だけを見て出されているからです。
理由として成立しやすいもの
- 現物を見て初めて分かった故障・劣化・欠品(庫内の損傷、パッキン、部品の欠落など)
- 聞いていた年式・型番と実物が違った
- 数量が事前の申告と違った
- 搬出経路の問題で、想定していない手間や機材が要ることが分かった
搬出で止まる典型は厨房機器は「売れるか」より先に「出せるか」|搬出経路で買取が止まる5つの典型と、撤去当日の段取りにまとめています。
理由として弱いもの
- 理由の説明が「相場が変わった」「今はこの値段」だけ
- 品目ごとではなく「一式」でまとめて下がっている
- 下がった根拠を聞いても、どの機器がいくら下がったかが出てこない
- 明け渡し日が迫っているこちらの事情を、相手が先に確認してから提示してきた
事前の段階で何が査定額を動かすかは厨房機器の査定額が下がる理由|買取を頼む前にやっておくと金額が変わることで整理しています。ここに書かれている理由に当てはまらない減額は、その場で理由を聞いてよい減額です。
その場でやる4つ
1. 品目ごとに「いくら下がったか」を出してもらう
総額だけを見て判断しないでください。聞くのは一つです。
「どの品目が、いくらから、いくらに下がりましたか」
理由のある減額なら、この質問には答えられます。答えが総額でしか返ってこないときは、その時点で比較できる情報が手元にありません。
見積もりを比べられる形に直す考え方は買取と処分の見積もりを1枚で比べる|「買取額 − 処分費」で手残りを出すにあります。
2. その場でサインしない
書面にサインした後は、話が「交渉」から「合意済み」に変わります。
- 押印・署名を求められたら、「一度持ち帰って確認します」で構いません
- 急ぐ理由を相手が説明してくる場合でも、その急ぎはこちらの都合ではありません
3. 引き渡さない
これがいちばん大事です。サインより先に、物が出ていってしまうと戻りません。
- 金額に納得していない品目は、その日は積ませない
- 「先に運んでおいて、金額は後で」は受けない
- すでに積み込みが始まっていたら、止めてよい
4. 現場の記録を取る
- 提示された金額の紙をもらう(口頭のみで終わらせない)
- 減額の理由として指摘された箇所を写真に撮る
- やりとりは口頭で終わらせず、メールやメッセージで一度書き起こして送る
「言った・言わない」になった時点で、こちら側に残っているものが何も無い、という状況を避けるためです。
明け渡し日が迫っていて、断れないとき
これが当日減額のいちばん苦しいところです。断ったら処分が間に合わないという状況だと、金額の話が成立しなくなります。
この状況は、買取の日程を明け渡しのぎりぎりに置いたときに生まれます。
- 査定と引き取りの日を、明け渡し日から数日ではなく数週間前に置く
- 断ったときに次へ動ける余白を残す
- 処分業者への切り替えも視野に入れておく(処分費がかかっても、手残りでは上回ることがあります)
日程の組み方は明け渡しまでに、買取をどの順番で入れるか|先に原状回復を頼むと、売れるものが消えますと飲食店の閉店はどれくらいかかる?|引き渡し日から逆算するスケジュールの立て方に分けて書いています。
すでに日が無い場合でも、その日のうちに他社へ連絡だけ入れておくと、少なくとも「一社しか選べない」状態からは抜けられます。業者の当たり方は閉店時の買取業者はどう選ぶか|見積もりの取り方と、「無料」の範囲を確かめる6つの手順にまとめました。
事業としての取引では、消費者向けの制度がそのまま使えるとは限りません
訪問での契約に関する消費者向けの制度(クーリング・オフなど)は、事業としての取引に同じように適用されるとは限りません。 店舗の設備・備品の売却は事業者間の取引として扱われることが多く、適用されるかどうかはケースによって変わります。
ご自身のケースが当たるかどうかは、ここでは判断できません。 お住まいの地域の消費生活センター、各地の商工会議所・商工会の相談窓口、または弁護士など、公的・専門の窓口で確認してください。
だからこそ、その場でサインしない・引き渡さないが現実的な防御になります。後から取り消せる前提で動かない、ということです。
次回に効く、たった一つの予防
当日の減額は、事前に現物の情報を渡しておくほど起きにくくなります。
- 依頼前に自分で撮っておく写真は買取を頼む前に撮っておく写真10カット|査定が早くなり、当日の減額も減ります
- 型番・年式・使用年数など、先に用意する情報は厨房機器の査定を頼む前に、自分で用意しておく5つの情報
事前に渡した情報が多いほど、「見てみたら違った」と言える範囲が狭くなります。 これが当日の減額をいちばん減らします。
よくある質問
Q. 減額を断ったら、引き取ってもらえなくなりませんか? A. その可能性はあります。だから断れる日程に置いておくことが先です。日が無い状態で断ると、処分の手当てが間に合わなくなります。
Q. 一部だけ売って、残りは断れますか? A. 品目ごとに金額が出ていれば可能です。総額でしか提示されていない場合、そもそも切り分けられません。 品目別の提示をもらう理由はここにもあります。
Q. 当日その場で現金をもらう約束でした。金額が違う場合は? A. 支払いの形(当日現金・後日振込・相殺)によって、後から動かせる余地が変わります。厨房機器を売った代金は、いつ・どうやって支払われるのかを確認してください。
Q. 従業員や取引先にまだ閉店を伝えていません。査定を先に入れても大丈夫ですか? A. 順番の考え方は閉店時の買取は「査定は公表の前、引き取りは伝えた後」にまとめています。
まとめ
- 当日の減額は珍しくない。理由が品目ごとに説明できるかどうかで分かれます
- 聞くのは一つ。「どの品目が、いくらから、いくらに下がったか」
- その場でサインしない。引き渡さない。取り消せる前提で動かない
- 断れないのは、日程を明け渡しのぎりぎりに置いたとき。査定は数週間前に
- 消費者向けの制度が事業の取引に適用されるとは限りません。該当するかは消費生活センター等の窓口で確認を
- 予防は一つだけ。事前に現物の情報を出しておく
金額が動いた日に決める必要は、ほとんどの場合ありません。
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