店を閉めると決めたあと、原状回復の業者探しで最初につまずくのは「どこに頼めば安いか」ではありません。そもそも自分で業者を選べる契約なのかです。
ここを確かめずに相見積もりを集めても、貸主側から「工事はこちらの指定業者で」と言われれば、集めた見積もりは交渉材料にしかなりません。この記事では、選べるかどうかの確かめ方、選べる場合の相見積もりの取り方、見積書で比べる項目、そして買取・居抜きとどの順番で組み合わせるかを整理します。
この記事で答えられること: – 業者を選べるかは、契約書と貸主への確認で決まる – 相見積もりは、業者ごとに条件を変えずに「同じ条件書」で頼む – 原状回復を頼む前に、売れる設備を先に査定に出す
まず、自分で業者を選べる契約かを確かめる
店舗の工事は、誰が発注し誰が費用を持つかで、一般に次の3つに分けて呼ばれます。
| 区分(呼び方) | 発注する人 | 費用を持つ人 | 業者を選べるか |
|---|---|---|---|
| A工事 | 貸主 | 貸主 | 借主は関わらない |
| B工事 | 貸主(または貸主の指定業者) | 借主 | 原則として選べない |
| C工事 | 借主 | 借主 | 選べる(貸主の承認が要ることが多い) |
この区分は法律で決まった言葉ではなく、ビルや契約ごとの取り決めです。同じ「原状回復」でも、内装の撤去はC工事、空調・防災設備・共用部に関わる部分はB工事、と分かれていることがよくあります。
確かめる場所は次の3つです。
- 賃貸借契約書の「原状回復」「工事」の条項(「貸主の指定する業者」「貸主の承諾を得て」などの文言)
- 工事区分表・館内規則(ビルによっては別冊になっている)
- 貸主・管理会社への問い合わせ(「内装の撤去は、こちらで手配した業者で行ってよいか」「指定業者の工事はどの範囲か」を書面かメールで聞く)
契約書の読み方は閉店の費用は、賃貸借契約書の7か所でほぼ決まっていますにまとめています。指定業者(B工事)で相見積もりが取れない場合の金額の確かめ方は原状回復の業者は自分で選べるのかで扱っているので、この記事では「選べる部分」について書きます。
相見積もりは「同じ条件書」で取る
選べる部分があると分かったら、2〜3社に見積もりを頼みます。このとき一番多い失敗は、業者ごとに伝える内容が少しずつ違い、出てきた金額を比べられなくなることです。
頼む前に、次をA4一枚にまとめて、全社に同じものを渡してください。
| 条件書に書くこと | 例 |
|---|---|
| 物件の所在地・階数・広さ | ◯◯ビル2階・約◯坪 |
| 戻す状態 | 「スケルトン(躯体のみ)」か「入居時の内装まで」か。契約書の文言をそのまま写す |
| 工事区分 | C工事で頼む範囲/B工事で貸主側が行う範囲 |
| 引き渡し期限 | 明け渡し日。工事の着手可能日と終了期限 |
| 作業できる時間帯 | 館内規則(夜間のみ・土日不可・搬出エレベーターの使用時間 など) |
| 残っているもの | 厨房機器・什器のうち、買取や持ち出しで工事前に無くなるものと、残置して処分を頼むものの区別 |
| 現地調査の希望日 | 2〜3候補 |
「残っているもの」の欄を空けたまま頼むと、処分費が見積もりに含まれたり含まれなかったりして、金額の差が工事の差なのか処分の差なのか分からなくなります。
現地調査は、可能なら同じ日に時間をずらして来てもらうと、比べやすくなります。
見積書で比べるところ
金額の合計だけで比べると、安く見えた見積もりが後で増えることがあります。次の項目が分かれて書かれているかを見てください。
- 解体・撤去(どこまで壊すか。床・壁・天井・造作それぞれ)
- 設備の撤去・処理(ダクト、グリストラップ、給排水、ガス配管、電気配線の撤去と端末処理)
- 廃棄物の処分費(工事で出る廃材の運搬・処分。残置物の処分を含むかどうか)
- 養生・共用部の保護(エレベーターや廊下)
- 諸経費・管理費
- 追加費用の条件(「現地で想定外の状態が出た場合」の扱いと、単価)
「一式」でまとめられている項目が多いほど、比べにくく、後から動きやすくなります。一式を分解してもらう聞き方は原状回復の見積もりが高い気がしたら、金額が跳ねやすい設備の3か所は原状回復の見積もりが想定より跳ねるのは、たいてい設備ですにまとめています。
業者に確かめておくこと
見積もりを頼む段階で、次も聞いておくと、当日のトラブルを減らせます。
- 建設業の許可・登録の有無と、その業種。 一定の金額未満の工事は建設業の許可がなくても請け負えます(建設業法第3条第1項ただし書き)。許可の有無だけで良し悪しは決まりませんが、工事の規模に見合った体制かを判断する材料になります。
- 工事で出た廃材を、誰の責任で、どの許可業者に運んで処分するか。 解体などの工事で出る廃材は、工事を元請けとして請け負った業者が排出事業者になるのが原則です(廃棄物処理法第21条の3)。処分の流れを書面で示せるかを聞いてください。
- 店に残した物(残置物)の処分を、工事と一緒に頼めるか。 店の営業で使っていた物は工事の廃材とは扱いが分かれることがあります。頼める場合も、どの許可で運ぶのかを確かめてください。分け方は飲食店の閉店で出る廃棄物の処分を参照してください。
- 貸主・管理会社との立会いに同席するか。 引き渡しの立会いで指摘が出たとき、その場で説明できる人がいるかで、やり直しの範囲が変わります。工程と立会いのポイントは店舗の原状回復工事は、何日かかって何をするのかにあります。
業者を決める前に、売れるものを先に査定に出す
原状回復の業者が入ると、厨房機器や什器は撤去される側のものになります。そこで値段が付くはずだった機器まで、処分費を払って出すことになりがちです。
順番は次のとおりです。
- 契約書と貸主への確認で、戻す状態と工事区分を決める
- 居抜きで引き継ぐ人がいないかを当たる(造作を残せれば、原状回復そのものが小さくなる)
- 厨房機器・什器の買取査定を受ける(工事の前に、搬出の日を決める)
- 残る物を確定させてから、原状回復の相見積もりを取る
- 業者を決め、工事・引き渡しの日程を組む
3を4より先にやるのがポイントです。 残る物が決まっていないと、見積もりの「処分費」が比べられません。詳しい段取りは明け渡しまでに、買取をどの順番で入れるか、居抜きと原状回復のどちらが得かは居抜きで売るか、原状回復して返すかにまとめています。
よくある質問
Q. 相見積もりは何社くらい取ればいいですか。 A. 2〜3社が目安です。数を増やすより、同じ条件書で頼むことのほうが比べやすさに効きます。現地調査の日程が合わない業者が出ることも見込んで、余裕をもって声をかけてください。
Q. 一番安い見積もりの業者に決めていいですか。 A. 項目が分かれていて、追加費用の条件と廃材の処分の流れがはっきりしていれば、候補にしてよいと考えられます。合計が安くても、一式が多い・追加の条件が書かれていない見積もりは、後から増える余地があります。
Q. 貸主から指定業者を使うよう言われました。断れますか。 A. 契約書や工事区分表で指定業者の工事(B工事)と決まっている範囲は、原則として借主の判断だけでは変えられません。どこまでが指定の範囲かを書面で確かめたうえで、範囲外の部分だけ自分で手配する、という分け方ができることがあります。迷うときは、契約に詳しい専門家(弁護士など)に相談してください。
Q. 工事中に、見積もりに無い作業が必要と言われたら。 A. その場で口頭で了承せず、追加の内容と金額を書面(メール可)で出してもらってから決めてください。見積もりの段階で「追加費用の条件」を確かめておくと、このときの判断が速くなります。
※本記事は、店舗の原状回復業者の選び方について一般的な考え方を整理したもので、個別の契約や工事の判断を示すものではありません。契約の内容・ビルの規則によって、選べる範囲や手続きは異なります。法令は改正されることがあります。条文はe-Gov法令検索で最新のものをご確認ください(記事作成日:2026-10-17)。最終的な判断は、契約書・貸主・管理会社への確認と、必要に応じて専門家への相談のうえで行ってください。
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