閉店の片付けで、意外と扱いに迷うのがビールサーバーです。カウンターの下の冷却器、注ぎ口のタワー、樽、炭酸ガスのボンベ。毎日使っていた物なのに、「これは店で買った物だったか、借りている物だったか」を、すぐに答えられない店主は少なくありません。開業のときに取引先がまとめて段取りしてくれた、前の店から居抜きで引き継いだ、という店ほど分かりにくくなります。
この記事では、閉店するときのビールサーバーを、「誰の物か」を確かめる → 借りている物は返す → 自分の物は売るか処分するの順に整理します。メーカーや取引先ごとの返却の決まりは、公式の案内で確かめられなかったので書いていません。返し方は、取引している酒販店(卸)か契約書で確かめてください。
この記事の要点
- ビールサーバーは本体(冷却器・タワー)・樽・炭酸ガスボンベの3つに分けて考える。持ち主がそれぞれ違うことがある
- 持ち主は、契約書・納品書・請求書の明細、本体の表示、取引先への確認で確かめる。思い込みで売ったり捨てたりしない
- 借りている物は、閉店日が決まった時点で取引先に連絡し、最後の納品・引き取りの日・返す物を決める
- 最後の営業に向けて樽の注文量を減らしていく。使いかけの樽をどうするかも取引先に聞く
- 自分の物なら、ほかの厨房機器と一緒に買取の見積もりを取る。捨てるなら産業廃棄物として扱い、店がマニフェストを交付する
- 居抜きで次の店に残すなら、自分の物でない機器は造作譲渡のリストに入れない
まず「誰の物か」を3つに分けて確かめる
ビールサーバーとひと口に言っても、店にあるのはたいてい次の3つです。
| 物 | 中身 | 持ち主として考えられるもの |
|---|---|---|
| 本体 | 冷却器(カウンター下・据え置き)と、注ぎ口のタワー・ホース | 店が買った物/取引先から借りている物/リース会社の物 |
| 樽 | 生ビールの入った容器。空いた樽も含む | 中身は店が買った物でも、容器は返す前提のことがある |
| 炭酸ガスボンベ | ビールを押し出すガスの容器 | 中身のガスと容器の持ち主が違うことがある |
3つの持ち主が同じとは限りません。 本体は店が買った物でも、樽とボンベは返す物、ということもありえます。1つずつ確かめてください。
確かめる手がかりは次の4つです。
- 契約書・覚書:開業時に取引先と交わした書面に、サーバーの貸し借りや設置の条件が書かれていないか
- 納品書・請求書の明細:サーバーの代金を払った記録があるか。毎月の請求に機器の使用料やリース料が載っていないか
- 本体の表示:本体やタワーに、所有者の名前や管理番号のシールが貼られていないか
- 取引先への確認:書類が見つからなければ、いつも樽を納めてくれている酒販店(卸)に「このサーバーはどちらの物ですか」と聞くのがいちばん確実
毎月の請求にリース料が載っているなら、リース会社の物です。リース中の機器の扱い(残りの支払い・返却・違約金)は閉店するときリース中の厨房機器はどうなる?にまとめています。
借りている物は、閉店日が決まったら取引先に連絡する
持ち主が取引先だと分かったら、閉店日が決まった時点で連絡します。閉店の直前に連絡すると、引き取りの日が閉店日に間に合わず、店を明け渡す日まで機器が残ってしまうことがあります。
連絡のときに聞いておくことは次のとおりです。
- 返す物の範囲:本体(冷却器・タワー・ホース)、樽(空き樽を含む)、炭酸ガスボンベのうち、どれを返すのか
- 引き取りの日と方法:取引先が引き取りに来るのか、こちらから返すのか。明け渡し日より前にできるか
- 返す前にしておくこと:洗浄が要るか、配管を外すのは誰か、付属品(予備のホース・部品)も返すのか
- 費用:引き取りや撤去に費用がかかるか、かからないか
- 最後の納品:最後の樽をいつ、何本納めてもらうか
費用がかかるかどうかは、取引先と契約によって違います。「借りている物だから無料のはず」と決めつけず、書面か取引先の答えで確かめてから見積もりや予算に入れてください。
サーバーに限らず、閉店で止め忘れやすい契約は閉店したのに引き落としが止まらない|飲食店が解約を忘れやすい契約20で一覧にしています。
最後の営業までの段取り|樽を余らせない
閉店が近づいたら、樽の注文量を少しずつ減らして、最後の営業でちょうど使い切るように調整します。余った生ビールは、売り切るか、取引先に扱いを相談することになります。酒類を含む在庫の片付け方は飲食店の在庫・食材・酒類の処分方法を見てください。
使いかけの樽をどうするかも、取引先に聞いておきます。なお、キリンの飲食店向けの案内(営業を再開するときの注意)には「休業前の使いかけの樽は必ず新しい樽に交換ください。」とあります。閉店ではなくいったん休業にする場合も、使いかけの樽をそのまま置いておけばよい、とはならない点に注意してください(閉店と休業の違いは「閉店」と「休業」はどこが違うのか)。
最後の営業が終わったら、炭酸ガスボンベの元栓を閉めます。キリンの業務用のトラブルQ&Aには、ボンベの元栓は「時計周りに回すと閉まります。」とあります。機種によって違うことがあるので、取り付けたときの説明書や取引先の案内に従ってください。
電気を止めるのは、サーバーの引き取りや撤去が終わってからにします。先に電気を止めると、引き取りの前の確認や作業ができなくなることがあります。順番の全体は飲食店の閉店で電気・ガス・水道はいつ止める?にまとめています。
自分の物なら|売るか、処分するか
契約書や請求の明細で、店が代金を払って買った物だと確かめられたら、ほかの厨房機器と同じように、売るか処分するかを考えます。
- 売る:製氷機や冷蔵庫など、ほかの厨房機器と一緒に買取の見積もりを取ると話が早くなります。中古品を買い取って売る事業者は、古物営業法第3条にもとづく都道府県公安委員会の許可が要るので、許可番号を確かめておきます。業者の選び方は閉店時の買取業者はどう選ぶかを見てください
- 処分する:店の営業で使っていた機器を捨てるときは、産業廃棄物として扱います(金属くず・廃プラスチック類など)。処理を業者に委託するときは、排出事業者である店の側がマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、写しを保存します(廃棄物処理法第12条の3)。区分の考え方は飲食店の閉店で出る廃棄物の処分にまとめています
- 冷却の仕組みを確かめる:冷却器に冷媒(フロン類)を使っている機種かどうかで、処分の段取りが変わることがあります。処分を頼む業者に機種名を伝えて確かめてください。業務用の冷凍冷蔵機器のフロン回収の流れは業務用の冷蔵庫・製氷機は、捨てる前にフロンの回収が要りますを見てください
樽やボンベは、本体を買った店でも返す物のことがあります。本体を売る・捨てるときも、樽とボンベは別に持ち主を確かめてください。
居抜きで次の店に残すとき
居抜きで店を次の人に引き継ぐとき、「ビールサーバーもそのまま使ってもらえば片付けが減る」と考えがちです。ただし、自分の物でない機器は、造作として譲ることはできません。取引先やリース会社の物を造作譲渡のリストに入れてしまうと、引き渡したあとで持ち主との間でもめる原因になります。
- 借りている物は、造作譲渡のリストに入れない。次の店が同じ取引先と取引を続けたいなら、取引先と次の店とで話してもらう
- 自分の物なら、造作のリストに入れて金額に含めてもよい。そのとき、樽とボンベは別であることをリストに書いておく
- 前の店から居抜きで引き継いだサーバーは、持ち主がさらに分かりにくい。引き継いだときの書類をまず探す
居抜きの金額の決まり方と進め方は居抜き売却と造作譲渡を見てください。
取引先に連絡する前のチェックリスト
- 本体・樽・炭酸ガスボンベの数を数えた(空き樽も)
- 契約書・覚書・納品書・請求書の明細を探した
- 本体に所有者や管理番号の表示がないか見た
- 閉店日と、店を明け渡す日を決めた
- 最後に樽を納めてもらう日と本数の見当をつけた
- 居抜きで残すかどうかを決めた(残すなら、持ち主の確認が先)
よくある質問
ビールサーバーは、取引先から無料で借りている物ですか
店によって違います。店が買った物、取引先から借りている物、リースの物があり、取引先や契約によって条件も違います。契約書や請求の明細、取引先への確認で確かめてください。「無料で借りているはず」と決めつけて費用の見積もりから外すと、あとでずれが出ることがあります。
空いた樽やボンベは、ごみに出してよいですか
返す物のことがあるので、捨てる前に取引先に確かめてください。持ち主が取引先なら、店の判断で捨てることはできません。
前の店から居抜きで引き継いだサーバーは、どうすればよいですか
引き継いだときの造作譲渡の書類や、前の店から受け取った書類を探し、そのサーバーがどちらの物かを確かめます。分からなければ、いま樽を納めてくれている取引先に聞くのが確実です。
まとめ
- ビールサーバーは本体・樽・炭酸ガスボンベに分け、それぞれ「誰の物か」を確かめる
- 借りている物は、閉店日が決まったら取引先に連絡し、返す物・引き取りの日・費用・最後の納品を決める
- 最後の営業に向けて樽を減らし、終わったらボンベの元栓を閉める。電気は引き取りが終わってから止める
- 自分の物なら、ほかの厨房機器と一緒に見積もりを取る。捨てるなら産業廃棄物として扱い、店がマニフェストを交付する
- 居抜きで残すなら、自分の物でない機器は造作のリストに入れない
ビールサーバーが店の物だと分かったら、製氷機や冷蔵庫など、ほかの厨房機器とまとめて見積もりを取ると、処分費を減らせることがあります。当サイトでは、提携先へのお取次ぎでご相談を受け付けています。
※ キリンの飲食店向けの案内は2026年10月24日に確認しました(営業再開のその前に!・業務用トラブルQ&A 炭酸ガスボンベ)。条文は e-Gov 法令検索の廃棄物の処理及び清掃に関する法律・古物営業法によります。取引先との契約や手続きは店ごとに違います。最新の内容は取引先・所管の行政機関・専門家にご確認ください。
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