原則はひとつ「工事と搬出が終わるまで止めない」
ライフラインの解約でつまずく人の失敗は、ほぼ全部この一点に集約されます。解約日の基準は「営業最終日」ではなく「明け渡し日」です。営業を終えてからカギを返すまでのあいだに、店ではまだいくつもの作業が動きます。
- 厨房機器・什器の搬出(電動工具、照明、エレベーターの使用)
- 原状回復の解体工事(内装撤去・電気工事・排気ダクトの処理)
- 冷蔵庫・冷凍庫の霜取りと洗浄(電源を切ってから水が出る。排水も要る)
- グリストラップ、排水管、フードの最終清掃
- 明け渡し立ち会い(照明が点かないと、大家・管理会社が状態を確認できない)
とくに冷蔵・冷凍設備は要注意です。電源を落とすと霜が溶けて大量の水が出ます。先に水道を止めていると洗えず、においが残ったまま搬出することになります。買い取ってもらう予定の機器なら、状態は査定にそのまま響きます。機器のコンディションが金額をどう左右するかは厨房機器の査定額を下げてしまう要因で詳しく扱っています。
電気——「電灯」と「動力」は別契約。両方あることを忘れない
飲食店の電気は、1つの店で2契約になっていることが珍しくありません。
| 契約の種類 | 何に使っているか |
|---|---|
| 電灯(従量電灯など) | 照明、コンセント、レジ、小型機器 |
| 動力(低圧電力) | 業務用エアコン、冷蔵・冷凍庫、製氷機、食洗機など三相200Vの機器 |
電灯だけ解約して動力の契約が残り、誰も使っていない店に基本料金が発生し続けていた——これは本当によくある話です。動力は使用量がゼロでも基本料金がかかります。検針票や請求書を並べて、その店に紐づく契約が何本あるかを先に数えてください。
手続きそのものは、契約している電力会社への連絡で完了します。多くの場合は立ち会い不要ですが、メーターの位置によっては係員の作業が必要になります。連絡のときに「店舗の廃止」であることと、明け渡し日を伝えておくと確実です。
ガス——都市ガスとLPガスで、やることがまるで違う
ガスは閉店手続きの中でも取りこぼしが多い項目です。都市ガスとLPガス(プロパン)で、必要な作業も返すものも別物だからです。
都市ガスの場合
ガス会社に連絡して閉栓の手続きをします。屋内にメーターや元栓がある店舗では、立ち会いを求められるのが一般的です。日程が埋まりやすいので、明け渡し日が決まった時点で押さえておきます。
LPガスの場合
LPガスは、ボンベ(容器)・調整器・配管の一部が販売店の所有物であることが多く、撤去に来てもらう必要があります。さらに、次の点が閉店時に問題になりがちです。
- 無償貸与契約・設備の貸与があるか。給湯器やコンロを販売店が貸与している場合、契約期間の残りに応じて精算を求められることがある
- 保証金(預り金)を差し入れていないか。返還の手続きは自分から言わないと動かないことがある
- 容器の撤去日。ボンベが残っていると明け渡しが完了しない
この「貸与されていた設備」の扱いは、リースで入れた厨房機器とよく似た構造です。自分の持ち物ではないものが店の中に混ざっているという点で共通していて、閉店時にいちばん揉めやすいところでもあります。機器側の考え方はリース中の厨房機器がある状態で閉店するときを参照してください。
水道——最後まで残す。止めるのは清掃が終わってから
水道はいちばん最後まで残すインフラだと考えて構いません。厨房の清掃、グリストラップの汲み取り、床の洗い流し、トイレの清掃。どれも水がないと終わりません。
手続きは自治体の水道局(または指定の窓口)への連絡です。使用中止日を伝えると、その日までの使用量で精算されます。集合ビルのテナントで、水道料金が管理費に含まれていたり、ビル一括契約で各テナントに按分されている場合は、自分で解約するのではなく管理会社への届け出になることがあります。まずは請求がどこから来ているかを見てください。
電話・インターネット——ここだけは早めに動く
通信だけは他と逆で、早めに連絡したほうがいい項目です。理由は3つあります。
- 撤去工事が必要な場合がある。光回線の引き込み設備は、原状回復の一部として撤去を求められることがある。工事の枠は数週間先まで埋まることがある
- 解約の締め日が月単位で切られていることが多い。1日ずれると1か月ぶん請求される契約がある
- 電話番号は、廃止すると原則として戻らない。別の場所で再開する可能性が少しでもあるなら、廃止ではなく休止や転送の選択肢を先に聞く
居抜きで引き渡すなら、止めてはいけないものがある
ここまでは「店を空にして返す」前提でした。居抜きで次の借主・買主に引き渡す場合は、判断が逆になります。
設備を残したまま引き継ぐなら、ライフラインは「解約」ではなく「名義変更」で承継したほうがいい場面があります。とくにLPガスや電話番号、光回線は、いったん解約すると次の人が新規で引き込み直すことになり、費用も工期もかかります。それは造作の価値をそのまま押し下げます。
明け渡し日から逆算した、実際の順番
ここまでを1本の時系列にまとめます。日数は物件と業者の都合で前後しますので、「順番」のほうを持ち帰ってください。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 明け渡し日が決まった時点 | 通信(電話・ネット)に連絡し、撤去工事が要るか確認・枠を押さえる/LPガスの容器撤去と貸与設備の精算を打診/引き落とし明細から契約を全部書き出す |
| 営業最終日 | ここではまだ何も止めない |
| 営業終了〜搬出 | 電気・水は生かしたまま。冷蔵冷凍の霜取りと洗浄、機器の搬出 |
| 原状回復工事中 | 電気・水は工事に必要。工事業者に「いつまで要るか」を確認して停止日を決める |
| 工事完了・最終清掃後 | ガス閉栓(立ち会い)→ 水道の使用中止 → 電気の廃止(電灯・動力の両方) |
| 明け渡し立ち会い | 照明が必要なら電気だけ立ち会い当日まで残す判断もある |
| 明け渡し後 | 最終請求の着金確認、保証金・預り金の返還を追う |
よくある質問
Q. 名義が前のオーナーや大家のままでした。どうすればいいですか。
居抜きで入った店では珍しくありません。名義人本人でないと解約できないのが原則です。まず請求書と契約書で名義を確認し、名義人(前オーナー・管理会社・大家)に連絡を取ってください。連絡がつかない場合は、契約先の会社に事情を説明して手続き方法を確認します。放置すると、閉店後も基本料金が発生し続けます。
Q. 基本料金は日割りになりますか。
契約や事業者によって扱いが分かれます。日割りになるものと、月単位で切られるものが混在していると考えてください。だからこそ、解約日を1日ずらすだけで金額が変わることがあります。連絡するときに「この日で止めると、最終の請求はいくらになりますか」と金額まで聞いてしまうのがいちばん早いです。
Q. 全部止めたあとに、まだ荷物が残っていました。
これが最悪のパターンです。再開通には手数料と日数がかかり、そのあいだ賃料は発生します。「搬出が終わったこと」を自分の目で確認してから停止日を確定してください。倉庫やロフト、店外の物置、屋上の室外機まわりは見落としがちです。
まとめ
- 解約日の基準は営業最終日ではなく明け渡し日。工事と搬出が終わるまで電気と水は止めない
- 電気は電灯と動力の2契約があることが多い。動力の解約漏れは基本料金を垂れ流す
- ガスは都市ガスとLPガスで別物。LPは容器撤去・貸与設備・保証金の3点を確認する
- 通信だけは早めに動く。撤去工事の枠と、月単位の締め日があるため
- 居抜きで渡すなら解約ではなく名義変更。ただし相手が決まらないときの期限を先に決めておく
- 閉店手続き全体の抜け漏れ確認は閉店手続きチェックリストで
厨房機器や什器の扱いに迷ったら、処分費を払って捨てる前に一度ご相談ください。当センターは買取を行う提携先へのお取次ぎを通じて、搬出と処分の段取りまで含めてご案内しています。搬出の日程はライフラインの停止日と直結しますので、解約の連絡をする前に相談していただくほうが、結果として費用は下がります。

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