まず押さえる:閉店は「順序」で損得が決まる
閉店の作業は、大きく「契約を終わらせる」「モノを片づける」「届出を出す」の3つに分かれます。このうちお金が大きく動くのは最初の2つで、届出はほとんどが事務手続きです。それにもかかわらず、閉店を決めた経営者の多くは届出から調べ始めます。
結論から言えば、最初に確認すべきは賃貸借契約の解約予告期間、次が備品の所有権です。この2つを先に押さえないと、あとから取り返せない損失が出ます。
閉店を決めて、まず店内を空にした。什器も厨房機器もまとめて処分業者に引き取ってもらい、処分費を払った。その後で不動産会社から「この物件は居抜きで探している人がいる」と言われた ── 設備が残っていれば造作譲渡の交渉ができたが、空になった店舗にその価値はもうない。
STEP1 賃貸借契約の解約予告を確認する
店舗の賃貸借契約には、ほぼ必ず解約予告期間が定められています。「解約する場合は◯か月前までに書面で通知する」という条項です。
居住用の物件では1か月前が一般的ですが、店舗・事業用の物件では3か月前〜6か月前と長めに設定されていることが多いとされます。期間は契約ごとに異なるため、必ず手元の契約書で確認してください 要確認。
ここが重要なのは、予告期間の家賃は営業していなくても発生するからです。6か月前予告の契約で、閉店の1か月前に通知すれば、残り5か月分の家賃を払う義務が残る可能性があります。閉店を決めた時点で契約書を開くべき理由はここにあります。
あわせて確認しておく条項
- 原状回復の範囲 ── スケルトン(内装を全て撤去した状態)に戻す義務があるのか、現状のまま明け渡せるのか
- 造作譲渡の可否 ── 次のテナントに内装・設備を売る「居抜き」が契約上認められているか。貸主の承諾が必要な場合が多い
- 敷金・保証金の償却 ── 返還される額と、原状回復費が差し引かれる条件
- 中途解約の違約金 ── 定期借家契約の場合は特に注意
STEP2 備品の「所有権」を仕分ける(最重要)
店内にあるモノを、売れるもの・売れないものに分ける前に、まず自分のものかどうかで分けてください。ここを飛ばすと深刻なトラブルになります。
| 区分 | 所有者 | 売却できるか |
|---|---|---|
| 購入した厨房機器・什器 | 自分 | できる |
| リース中の機器 | リース会社 | できない |
| 割賦(ローン)支払中の機器 | 契約による(所有権留保のことがある) | 契約書の確認が必要 |
| ビールサーバー等のメーカー貸与品 | メーカー・卸 | できない(返却) |
| 建物に固定された内装・設備 | 造作として扱いが分かれる | 貸主の承諾が必要なことが多い |
製氷機、冷蔵庫、フライヤー、食洗機、POSレジあたりは、購入・リース・貸与が店舗ごとにバラバラなことが多い設備です。「昔のことで覚えていない」という場合は、毎月の口座引き落としの明細を確認すると、リース料の支払いが残っているかどうかの手がかりになります。
STEP3 原状回復か、居抜きかを決める
所有権の仕分けが済んだら、店舗をどの状態で明け渡すかを決めます。選択肢は大きく2つです。
スケルトン返し(原状回復)
内装・設備を撤去し、コンクリート躯体の状態に戻して返す方法です。契約でこれが義務づけられている場合は、原則として従う必要があります。撤去費用は自己負担で、飲食店は厨房設備・ダクト・グリストラップなどがあるぶん、他業種より費用が高くなりやすい傾向があります。具体的な金額は坪数・立地・設備の量で大きく変わるため、見積もりで確認してください 要確認。当サイトでは飲食店の原状回復サービスもご案内しています。
居抜き(造作譲渡)
内装・設備を残したまま次のテナントに引き継ぎ、造作の対価を受け取る方法です。うまくいけば原状回復費が不要になるうえ、譲渡代金が入るため、キャッシュの面では最も有利になり得ます。ただし貸主の承諾が前提で、次のテナントが見つからなければ成立しません。詳しくは飲食店の居抜き対応をご覧ください。
STEP4 従業員・取引先への対応
従業員を雇用している場合、解雇には法律上のルールがあります。労働基準法では、解雇する場合は少なくとも30日前に予告するか、予告しないときは30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが定められています。閉店日から逆算して、早めに伝える必要があります。
あわせて、社会保険の資格喪失手続き(年金事務所)、雇用保険の資格喪失と離職票の交付(ハローワーク)が必要になります。従業員の次の就職や失業給付に直結するため、遅れないようにしてください。
取引先については、食材の仕入停止の連絡、掛け(買掛金)の精算、おしぼり・リネン・廃棄物処理などの継続契約の解約予告を確認します。これらにも予告期間があることがあるため、家賃と同じ発想で契約書を見ておくと安全です。
STEP5 各種届出を出す
閉店に伴う届出は、業態と組織形態によって必要なものが変わります。代表的なものは次のとおりです。提出先・期限・様式は自治体によって運用が異なるため、必ず管轄窓口で確認してください 要確認。
| 届出 | 提出先 | 対象 |
|---|---|---|
| 飲食店営業の廃業届 | 保健所 | すべての飲食店(営業許可証を添える運用が一般的) |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 個人事業主 |
| 青色申告の取りやめ届出書 | 税務署 | 青色申告をしていた個人事業主 |
| 事業廃止届出書 | 税務署 | 消費税の課税事業者 |
| 事業廃止の申告 | 都道府県税事務所 | 個人事業主 |
| 深夜酒類提供飲食店営業の廃止届 | 警察署 | 深夜0時以降に酒類を提供していた店 |
| 風俗営業許可の返納 | 警察署 | 該当する許可を受けていた店 |
| 解散・清算の登記 | 法務局 | 法人 |
個人事業の廃業届は廃業日から1か月以内とされているなど、届出ごとに期限が設けられています。法人の解散・清算は手続きが複雑で費用も発生するため、税理士・司法書士など専門家に相談するのが確実です。
閉店チェックリスト
順番どおりに並べたものです。上から確認してください。
- 賃貸借契約書を開き、解約予告期間を確認した
- 原状回復の範囲(スケルトン義務の有無)を確認した
- 造作譲渡(居抜き)が契約上可能か、貸主の意向を確認した
- 店内の備品を購入品/リース品/貸与品に仕分けた
- リース契約の残債と中途解約の条件をリース会社に確認した
- 居抜きの可能性を探りつつ、備品の査定を並行して取った
- 従業員に30日前までに予告した(または予告手当を準備した)
- 社会保険・雇用保険の喪失手続きを段取りした
- 取引先の継続契約の解約予告を確認した
- 保健所・税務署などの届出先と期限を一覧にした
よくある質問
閉店を決めたら、まず何から手をつけるべきですか?
賃貸借契約書の確認です。解約予告期間が判明しないと、閉店日も、備品を片づける期限も決められません。届出は後からでも巻き返せますが、予告の遅れは家賃という形で確実に損失になります。
厨房機器はいつ売ればいいですか?
居抜きの可否が固まってからが基本です。居抜きで造作ごと譲渡できるなら、機器を個別に売るより有利になることがあります。ただし居抜きが成立するとは限らないため、査定だけは早めに取って、両にらみで進めるのが安全です。当サイトでは提携先へのお取次ぎという形で備品の一括買取をご案内しています。
古いオーブンや傷のある什器でも値段はつきますか?
状態・年式・メーカーによって評価は変わります。動作するかどうかが大きな分かれ目になりますが、判断は実物を見てからになります。まとめて引き取れるかどうかでも扱いが変わるため、まずは無料査定・お問い合わせから店内の状況をお知らせください。
支払いが厳しく、倒産も視野に入っています。備品を売って資金にしてもいいですか?
先に弁護士へ相談してください。破産などの法的整理を検討している段階で、経営者の判断だけで資産を処分すると、後の手続きで問題として扱われるおそれがあります。廃業(支払える状態で自主的にやめる)と倒産(支払不能で事業を続けられない)では、備品の扱いのルールがまったく違います。査定を受けること自体は問題ありませんが、売却して現金化する前に専門家の判断を仰いでください。
対応している業種を教えてください。
居酒屋・ラーメン店・カフェ・レストランなど、幅広い業態のご相談を承っています。業種別対応のページをご覧ください。ご利用の流れはこちらで確認できます。

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