まず結論:期間を決めているのは2つだけ
閉店の準備リストを作ると、項目は数十個になります。ですがそのほとんどは並行して進められるもので、全体の期間を伸ばしているわけではありません。
スケジュールの長さを実際に決めているのは次の2つです。
- 解約予告期間:賃貸借契約で定められた「何ヶ月前に伝えるか」。飲食店の事業用物件では3〜6ヶ月前とされていることが多いものの、契約ごとに異なります。ここが起点になります。
- 原状回復工事の着工枠:工事業者の日程が空いているか。繁忙期は希望日に取れないことがあります。
この2つ以外、たとえば厨房機器の買取査定や在庫の整理は、期間そのものを長くする要因にはなりません。まず契約書を開いて解約予告期間を確認する。ここが出発点です。解約予告と敷金の扱いについては閉店時の解約予告と敷金の返還で詳しく扱っています。
引き渡し日から逆算する
スケジュールは「今日から積み上げる」のではなく、引き渡し日を先に置いて逆算すると破綻しません。以下は解約予告が6ヶ月前の契約を想定した組み方です。予告期間が3ヶ月なら、前半を圧縮して同じ順序で進めます。
| 時期 | やること | なぜこの時期か |
|---|---|---|
| 引き渡しの6ヶ月前 | 契約書の確認/解約予告の通知 | ここが遅れると全体が後ろにずれ、予告不足の違約金も発生しうる |
| 5ヶ月前 | 居抜き譲渡が可能か貸主に確認 | 可否によって以降の段取りが大きく変わるため、早い段階で確定させる |
| 4ヶ月前 | 厨房機器・什器の買取査定を受ける | 営業中の稼働状態のほうが評価されやすい |
| 3ヶ月前 | 原状回復の範囲を貸主と擦り合わせ、見積もりを取る | 工事枠の確保と、範囲の認識ズレの解消 |
| 2ヶ月前 | 従業員・取引先への通知/仕入れの縮小開始 | 在庫を残さず着地させるための助走期間 |
| 1ヶ月前 | 各種契約の解約手配/告知 | 営業最終日に向けた実務 |
| 営業最終日 | 営業終了 | — |
| 最終日〜引き渡し | 買取の引き取り→残置物処分→原状回復工事→立ち会い | この順序が費用に効く(次章) |
順番を間違えると費用が増える3か所
1. 処分してから査定を受ける
もっとも多い損失です。売れるものを捨ててから買取を検討すると、処分費を払ったうえで売却機会も失います。厨房機器は通電して動く状態のほうが評価されやすいため、営業中または営業終了直後に査定を受けるのが順序としては有利です。機器ごとの目安は厨房機器の買取相場にまとめています。
2. 居抜きの可否を確認する前に、原状回復を発注する
居抜きで次の借主に引き継げる場合、原状回復工事そのものが不要または縮小になることがあります。工事を先に発注してしまうと、この選択肢が消えます。判断材料は居抜き売却と原状回復のどちらが得かで比較しています。
3. 在庫を最後まで通常どおり仕入れる
閉店日が決まった後も同じ量を仕入れていると、最終日に在庫が残ります。残った食材・酒類は処分費に変わります。2ヶ月前から仕入れを絞っていくのが現実的です。扱いは飲食店の在庫・食材・酒類の処分方法を参照してください。什器や内装材まで含めた廃棄物全体の分け方と、許可業者への委託の手順は飲食店の閉店で出る廃棄物の処分で扱っています。
居抜きで譲る場合はスケジュールが変わる
居抜き譲渡が成立する場合、スケジュールの性質が変わります。原状回復工事が減る一方で、次の借主が見つかるかどうかという不確定要素が入るためです。
ここで注意したいのは、居抜きの相手探しに期待して解約予告を遅らせないことです。相手が見つからなかった場合、予告期間が足りず、そのまま賃料が発生し続けます。解約予告は予定どおり出したうえで、並行して居抜きを探すのが安全な進め方です。造作譲渡の実務は居抜き売却と造作譲渡の進め方で扱っています。次の借主が何を見て判断するかは、居抜き・中古厨房機器で開業する側の視点が参考になります。
つまずきやすいポイント
リース機器は「自分のもの」ではない
リース契約中の機器は売却できません。買取査定の対象から外れ、別途で残債や返却の手続きが必要になります。査定を受ける前に、リースと自己所有を分けておくと話が早く進みます。詳しくは閉店時のリース機器の扱いをご覧ください。
原状回復の「範囲」は契約書で決まる
どこまで戻すかは一般的な基準ではなく、賃貸借契約書の記載と貸主との合意で決まります。見積もりを取る前に範囲を確定させないと、金額の比較ができません。範囲の考え方は飲食店の原状回復はどこまでが範囲かで整理しています。
従業員への通知を後回しにしない
スケジュールの都合で最後に回されがちですが、生活に直結する話であり、法的な手続きも関わります。詳細は閉店時の従業員対応をご確認ください。お客様や仕入先への告知も同じ時期に重なります。誰に・いつ・どう伝えるかは飲食店の閉店お知らせの書き方に文例つきで整理しています。
まとめ
飲食店の閉店にかかる期間は、契約書の解約予告期間で大枠が決まり、原状回復工事の日程で最後が決まります。やることの多さは期間を伸ばしません。伸ばすのは、契約書の確認が遅れることと、営業最終日から引き渡しまでの余白を取らないことです。
そして費用に効くのは順番です。査定を先に、処分を後に。居抜きの可否を先に、工事の発注を後に。この2つを守るだけで、出ていく金額は変わります。まずは契約書を開いて、解約予告期間を確認するところから始めてください。全体の費用感は飲食店の閉店にかかる費用の総額に、手続きの一覧は閉店手続きチェックリストにまとめています。
本記事の期間はすべて一般的な目安であり、実際の日数は物件・契約・工事範囲・地域によって異なります。解約予告期間および原状回復の範囲は賃貸借契約書の内容が優先されます。閉店に伴う税務・法務・労務の判断は税理士・弁護士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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