中古厨房機器の値段は「次の買い手」で決まる
中古の厨房機器を買うのは、ほとんどがこれから店を開く人です。開業費用を抑えたい人が、新品の代わりに買います。つまり買取価格は、次の3つを満たすかで決まります。
- 欲しい人がいる型か:多くの店で使われている標準的な機種ほど需要があります。
- すぐ使える状態か:動作すること。故障品は部品取りの価値しか残りません。
- 運び出せるか:搬出できなければ、現場では価値になりません。
この3つ目が、意外なほど金額に効きます。厨房機器は重量物です。2階以上でエレベーターがない、階段が狭い、通路を曲がれない——こうした条件では搬出費が膨らみ、その分は査定から差し引かれます。機器の状態が同じでも、物件の条件で結果が変わるのはこのためです。
「買取相場」を調べても自分の店の値段が出ない理由と、目安の作り方
「厨房機器 買取相場」で検索すると、いくつもの金額が出てきます。それでも、自分の店の機器がいくらになるのかは分かりません。理由は3つあります。
- 公的な相場の統計がない:中古厨房機器には、取引価格をまとめて公表している公的な統計がありません。検索で出てくる金額は、どれも個々の業者が出している数字です。
- 出ている金額は「条件つき」:業者のサイトに載る金額は、ある機種・ある状態・ある時期の「買取実績」か、条件がすべて揃ったときの「上限」であることがほとんどです。自分の機器と、型番も製造年も状態も違います。
- 機器の外の条件で動く:同じ機種でも、搬出のしやすさ、まとめて出す台数、地域、時期(開業が多い時期かどうか)で結果が変わります。前の章のとおり、値段を決めるのは「次の買い手」だからです。
では、何を目安にすればよいか。自分の店の条件で出された見積もりを、同じ条件で複数そろえる——これが、いちばん確かな「自分の店の相場」です。
- 一覧を作る:品名・メーカー・型番・製造年・状態(動くか、不具合はあるか)・台数。銘板の写真があれば十分です。用意する情報は査定を頼む前に用意しておく5つの情報にまとめています。
- 搬出条件を添える:階数・エレベーターの有無・通路の幅・前の道路。ここが抜けると、あとで金額が変わります。
- 3社前後に同じ一覧を渡す:渡す情報が揃っていないと、出てきた金額は比べられません。頼み方は閉店時の買取業者の選び方で手順にしています。
- 品目別の内訳で出してもらう:「一式」では、どの機器に値が付き、どれが処分費になったのかが分かりません。
- 見積もりに日付を残す:中古の値は時期で動きます。いつの見積もりかが分かれば、時間が空いたときに取り直す判断がつきます。
この記事に金額の一覧を載せていないのも同じ理由です。出典と時点のない数字は、目安のつもりで見ても判断を誤らせます。3社分の内訳がそろえば、どの品目が高く、どこで差が出ているのかが自分の目で比べられます。
値段がつきやすい物・つきにくい物
| 例 | 理由 | |
|---|---|---|
| つきやすい | 業務用冷蔵庫・冷凍庫、製氷機、ガスレンジ、フライヤー、スライサー、ミキサー、食洗機、シンク・作業台(ステンレス) | 業態を問わず使われる。中古市場が確立している |
| 状態次第 | 空調、券売機、POSレジ、カウンター什器、椅子・テーブル | 年式と状態の差が大きい。数がまとまると動きやすい |
| つきにくい | 特殊業態向けの専用設備、老朽化した機器、サイズが特殊な造作家具、内装の一部と化した設備 | 次に使う人が限られる。取り外し費用のほうが高くつく |
| ほぼ値がつかない | 故障品・不動品、大きく破損した什器、消耗品、汚れが落ちない物 | 再販できない。処分費の対象になる |
年式の目安はあるが、絶対ではない
一般に、製造から年数が経つほど評価は下がり、一定の年式を超えると再販が難しくなるとされています。ただし年式だけで機械的に決まるわけではありません。人気機種で状態がよければ古くても動くことがありますし、新しくても不人気な特殊機種なら値がつかないこともあります。「古いから無理だろう」と自己判断で処分に回す前に、まとめて見てもらったほうが確実です。
品目別の値の付き方(製造年・メーカー・状態・搬出条件)
どの品目でも、値を決める軸は同じ4つです。
- 製造年:新しいほど次の買い手が見つかりやすい。銘板で確認できます。
- メーカー・型番:多くの店で使われている標準的な機種ほど、中古でも動きます。
- 状態:動くか、不具合はないか、清掃されているか。
- 搬出条件:大型・重量物ほど、運び出しにくい物件では査定から差し引かれます(搬出経路で買取が止まる典型)。
そのうえで、品目ごとに「特に効くこと」が違います。
| 品目 | 値の付き方を左右すること | 詳しく |
|---|---|---|
| 業務用冷蔵庫・冷凍庫 | メーカーと型番、製造年、きちんと冷えるか、扉のパッキンや庫内の傷み。電源(単相か三相か)やサイズによって、買い手の範囲が変わります。 | 値が付かず廃棄に回すときは、フロン回収が要ります(フロン回収の記事) |
| 製氷機 | 製造年と動作、水回りの衛生状態。止め方と水抜きの順番で、査定のときの状態が変わります。 | 業務用製氷機の止め方と査定 |
| 食器洗浄機 | 状態の前に、自分の物かどうか。リースやレンタル・貸与のことが多い品目です。 | 業務用食器洗浄機の閉店時の扱い |
| ガスレンジ・フライヤー | 製造年と油汚れの程度、そしてガス種(都市ガスかプロパンか)。ガス種が合わない店では使えないため、買い手の範囲が絞られます。取り外しはガス会社や工事業者に依頼するのが安全です。 | 査定額が下がる理由 |
| 券売機 | 製造年と、2024年7月に発行が始まった新紙幣に対応しているか。対応の有無で、次に使える店かどうかが変わります。 | — |
| シンク・作業台(ステンレス) | 寸法と、へこみ・錆の有無。壊れる部品がないぶん、製造年より状態とサイズが効きます。 | — |
| 業務用エアコン | 室外機を含めて取り外す費用と、そもそも自分の物か(物件の設備ではないか)。外すと費用が上回ることもあります。 | 閉店時の業務用エアコン |
| 客席のテーブル・椅子 | 脚数がそろっているか、同じ型がまとまってあるか。厨房機器とは値の付き方が違います。 | 客席のテーブル・椅子は売れるのか |
| 食器・グラス | 業務用として揃いがあるか、欠けや割れ。1点ずつより、まとまった数で見られます。 | 閉店した飲食店の食器・グラス |
どの品目でも、同じ物がまとまってあるほど、見てもらう価値が上がります。逆に、どの項目で減点されやすいかは厨房機器の査定額が下がる理由で整理しています。
買取か、処分か——損益分岐の考え方
閉店時に本当に判断すべきなのは「いくらで売れるか」ではありません。店を空にするのにいくらかかるかです。買取はその総額を下げる手段のひとつにすぎません。
| 状況 | 現実的な着地 |
|---|---|
| 値のつく機器が多い/搬出しやすい | 買取が処分費を上回り、手残りが出ることがある |
| 値のつく機器と、つかない物が混在(最も多い) | 買取分を処分費と相殺し、持ち出しを圧縮するのが現実的な着地 |
| 老朽化・故障が多い/搬出が困難 | 買取は期待できず、処分費が発生する。それでも一括で任せるほうが早い |
2つ目が実際には最も多いパターンです。「買取で儲ける」ではなく「出ていくお金を減らす」という捉え方をすると、判断を誤りません。なお、原状回復まで必要な物件では、そちらの工事費のほうが金額としては大きくなりがちです。範囲の考え方は飲食店の原状回復はどこまで?で整理しています。
査定前にやると結果が変わること
特別なことは要りません。ただ、やるとやらないとでは差が出ます。
- 掃除する:油汚れを落とすだけで印象が変わります。買い手はそのまま再販するので、清掃コストは査定に反映されます。最も費用対効果の高い作業です。
- 動くことを見せる:電源を入れて動作確認ができる状態にしておく。「たぶん動くと思う」は、動かない前提で評価されます。
- 付属品・説明書・鍵を揃える:棚板、トレー、専用パーツ。欠品は減額の理由になります。
- 型番が見える状態にする:銘板が汚れて読めないと確認に手間がかかります。
- 一覧を作る:品目・型番・台数。事前に渡せると査定が早く、比較もしやすくなります。
- リース・貸与品を分けておく:後述しますが、ここが最も事故が起きます。
最も大きいのは「早く動くこと」
掃除より効くのが時間です。退去期限が迫るほど、選択肢は減ります。期限直前になれば「置いていくしかない」ことが相手にも分かるため、条件は当然そちらに寄ります。複数の見積もりを比べられる時間があるかどうかが、結果を最も左右します。閉店の段取り全体は飲食店の閉店手続きチェックリストにまとめています。
売る前に確認すること(ここが事故のもと)
店内にある物が、すべて自分の所有物とは限りません。次のものは売却できない、あるいは手続きが別に必要になる可能性があります。
- リース中の機器:所有権はリース会社にあります。売却はできません。
- 割賦(分割)払いの途中の機器:所有権留保が付いている場合があります。
- 無償貸与品:ビールサーバー、製氷機、コーヒーマシンなど。酒販店やメーカーからの貸与であることがあります。長く店にあるため自分の物だと思い込みやすい設備です。
- 物件付帯の設備:空調などが貸主所有であることがあります。
避けたい業者の見分け方
買取の場面では、次のような進め方をする相手には注意してください。
- 見積もりが「一式」だけで内訳がない:何にいくら付いたのか分からないと、比較も検証もできません。
- その場で即決を迫る:「今日決めてくれれば」は、比較させないための言葉であることがあります。
- 作業後に追加費用が出てくる:搬出費・処分費・出張費の扱いを、着手前に書面で確認してください。
- 処分の行き先を説明できない:廃棄物の処理には法令上のルールがあります。
買取と処分・原状回復のどこまでを誰がやるのかは、あらかじめ線を引いておくと揉めません。サービスの範囲は備品一括買取サービス、進め方はご利用の流れをご確認ください。
よくある質問
営業中でも査定を受けられますか?
受けられますし、動作を確認できる分だけ有利になりやすいです。ただし店内で堂々と採寸していれば、従業員は必ず気づきます。閉店を伝える順番を決めていないなら、営業時間外に見てもらうか、先に伝えるかを決めてから動いてください。
買取額が処分費を下回ることはありますか?
あります。特に老朽化した機器が多い場合や、搬出が難しい物件では、差し引きで持ち出しになることは珍しくありません。その場合でも、分別・搬出・処分をまとめて任せられること自体に価値があります。閉店時は他にやることが多く、自分で捌く時間は残っていないのが普通です。
居抜きで店ごと譲るのと、設備だけ売るのはどちらが得ですか?
次の借主が見つかるなら、居抜きで店ごと引き継いでもらうほうが金額は大きくなりやすい傾向があります。ただし相手探しと貸主の承諾に時間がかかります。両者は排他ではなく、居抜きがまとまらなかった設備だけ買取に回すという組み合わせも可能です。居抜き対応の全体像は飲食店の居抜き対応で整理しています。
古物商の許可がない相手に売っても大丈夫ですか?
中古品を買い取って再販する事業者には、古物営業法上の許可が必要とされています。買取を依頼する際は、相手が許可を得た事業者かどうかを確認しておくと安心です。当サイトは飲食店の閉店に関する情報メディアであり、買取・回収は提携先へのお取次ぎとなります。
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