まず結論:査定額は「上限×減点」で決まる
中古の業務用厨房機器には、機種・メーカー・年式で決まる再販価格の上限があります。買取業者はその上限から、修理や清掃にかかる手間、運び出しの人工、売れるまでの保管期間を引いて金額を出します。つまり査定とは、「いくらで買うか」を決める作業ではなく、「いくら引くか」を決める作業です。
ここが分かると、打ち手も変わります。年式は動かせません。メーカーも変えられません。しかし清掃・稼働確認・付属品・搬出経路は、査定当日までに変えられます。同じ厨房でも、この準備の有無で金額が動くのはそのためです。
減点されやすい5つのポイント
1. 電源が入るか確認されていない
査定でいちばん大きく効くのが稼働の可否です。「たぶん動きます」と「その場で動くのを見た」では、扱いが変わります。動作未確認の機器は、業者側で修理費を見込んだ金額になるためです。
厄介なのは、閉店の段取りとして電気・ガスを先に止めてしまうケースです。止めた後に査定を呼ぶと、全台が動作未確認になります。冷蔵庫や製氷機のように「冷えるかどうか」が価値の中心にある機器では、この差が特に大きく出ます。ライフラインの解約は、査定と搬出が終わってから。順番を逆にしないでください。閉店全体の日程の組み方は引き渡し日から逆算するスケジュールの立て方で整理しています。
2. 汚れが「使用感」ではなく「劣化」に見える
厨房機器の中古市場で、清掃状態は思っている以上に金額に響きます。理由は単純で、買った業者が再販前に清掃するからです。清掃コストが読めない状態=その分を引かれる状態です。
- フライヤー・グリドルの油の固着(落ちるか落ちないかで判断が変わる)
- 冷蔵庫・冷凍庫の庫内のにおいとパッキンの状態
- 製氷機の水回りの汚れ・カビ・水垢(衛生機器のため厳しく見られる)
- 五徳・バーナーまわりの焦げ付き
- ステンレス面のサビ(表面か腐食かで別物)
完璧に磨き上げる必要はありません。求められているのは「通常の清掃で戻る汚れだ」と分かる状態です。営業最終日にひと通り洗って乾かしておくだけでも、印象は変わります。
3. 付属品が散らばっている・見つからない
棚板、ネット、天板、バット、リモコン、専用の給水ホース、取扱説明書。これらが揃っているかどうかは、再販できる状態かどうかに直結します。棚板が1枚足りない冷蔵庫は、そのままでは売り場に出せません。
閉店作業では、こうした小物が先に片付けられて所在不明になりがちです。機器の付属品は、機器の中か横にまとめて置いたままにしておく。これだけで拾える金額があります。
4. 搬出経路が見られていない
見落とされやすいのが運び出しやすさです。買取価格には撤去・運搬の人工が織り込まれるため、経路が悪ければその分が引かれます。
| 確認される点 | なぜ金額に効くか |
|---|---|
| 階数とエレベーターの有無・サイズ | 階段吊り上げになると人員と時間が増える |
| 店舗前の道路幅・駐車スペース | トラックを横付けできないと運搬距離が伸びる |
| 搬出時間帯の制限(商業ビル・繁華街) | 深夜早朝の指定があると人件費が上がる |
| 入口・通路の幅と機器のサイズ | 分解が必要なら作業費が加算される |
| ビル管理会社への申請の要否 | 養生・申請の手間が日程と費用に影響する |
これらは変えられない条件ですが、先に伝えてあるかどうかで話が変わります。当日になって「エレベーターに入りません」となれば、その場で減額されるか、日程が組み直しになります。写真か動画で経路を渡しておくと、見積もりの精度が上がります。
5. 電源仕様・ガス種が需要とずれている
業務用機器には単相100V・単相200V・三相200Vの別があり、ガス機器には都市ガス用とプロパン(LPG)用の別があります。これは性能の優劣ではなく、次に使う店を選ぶ条件です。
三相200Vの機器は、引き取り先の物件が三相を引いていなければ使えません。ガス種の違いも、機器によっては部品交換が必要になります。需要が薄い仕様=買い手が見つかるまで在庫として抱える期間が長い=その分が引かれるという構図です。
ここは自分では変えられない条件ですが、仕様を正確に伝えると査定が早く固まります。銘板(機器本体に貼られた金属プレート)に型番と電源仕様が書かれています。撮影して渡してください。
査定を呼ぶ前にやっておくこと
- 電気・ガス・水道を止める前に日程を決める。査定と搬出が終わってから解約する。順番を逆にすると全台が動作未確認になります。
- リース・割賦の機器を先に分ける。自己所有でないものは売れません。契約書を確認し、リース会社への連絡が要るものを別リストにします。
- ひと通り清掃して乾かす。油の固着と庫内のにおいを優先。完璧を目指す必要はありません。
- 付属品を機器のそばに戻す。棚板・天板・リモコン・説明書。片付けの過程で散らさない。
- 銘板と搬出経路を撮影する。型番・電源仕様・階段やエレベーター・店舗前の道路。事前に渡すほど見積もりの精度が上がります。
- そのうえで複数社に見せる。減点を潰してから比較するのが、いちばん差が出る順番です。
そもそも買い取れないもの
準備をしても対象にならないものがあります。ここを先に分けておくと、査定当日の話が早く済みます。
- リース契約中の機器(所有権が自分にないため売却できません。扱いは閉店時のリース機器の扱いを参照)
- 割賦・所有権留保が残っている機器(完済まで名義が移っていない場合があります)
- 造作として賃貸物件に固定されているもの(ダクト・グリストラップ・造作カウンターなど。居抜きなら残したほうが価値になります)
- 製造から年数が経ちすぎた機器(部品供給が終わっているものは再販が難しくなります)
- 食材・調味料・開封済みの消耗品(扱いは閉店時の在庫・食材の処分へ)
売る・譲る・捨てるの順番
閉店の現場で費用がふくらむ最大の原因は、売れるものを処分費を払って捨てることです。処分は最後に回してください。
順番としては、①居抜きで店ごと譲れるかを先に確認し、②譲れないと決まってから機器の買取査定を受け、③どちらにもならなかったものを処分する、という流れになります。居抜きで話が進むなら、機器はその場に残っていること自体が価値になるため、先に売ってしまうと選択肢が減ります。判断の分かれ目は居抜き譲渡と原状回復のどちらが得かで整理しています。
最後に残ったものの処分は、廃棄物としての区分と委託先の確認が要ります。手順は閉店時に出る廃棄物の処分にまとめました。閉店全体で何をいつやるかは閉店手続きチェックリストをご確認ください。
まとめ
厨房機器の査定額は、交渉ではなく準備で動きます。効くのは、電気を止める前に査定を入れること、ひと通り清掃すること、付属品を散らさないこと、搬出経路と銘板を先に渡すこと。どれも費用のかからない作業で、しかも査定当日を過ぎると取り返せません。
逆に言えば、年式や仕様のように動かせない条件で悩む必要はありません。動かせるところだけ整えて、そのうえで複数社に見せる。これが、いちばん確実に金額を上げる方法です。
本記事は中古厨房機器の一般的な評価の考え方を整理したものです。実際の査定額・買取可否・搬出費用は、機種・年式・状態・地域・時期および各事業者の販路によって異なります。リースや割賦の残る機器の処理、賃貸物件の造作の扱いは、契約書の内容とリース会社・貸主との合意が優先されます。個別の契約・税務の判断は、専門家にご確認ください。

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