閉店の日取りが決まると、次に来るのが「この機器と什器をどうするか」です。捨てるにも費用がかかる、売れるなら売りたい、でもどこに頼めばいいのか分からない——ここで止まる方が多い場面です。
買取業者は数多くありますが、同じ厨房を見せても、提示される金額と条件はかなり違います。違いは業者の善し悪しだけでなく、こちらが渡した情報の量でも変わります。
この記事では、比較できる形で見積もりを取る手順と、契約前に必ず確認する点を、実際に動く順番どおりにまとめます。
手順1:機器のリストを作る
最初にやることは、業者を探すことではありません。リストを作ることです。
これがないまま「見に来てください」と頼むと、業者ごとに見る対象がずれて、そもそも金額を比べられません。
リストに書く項目は4つだけです。
| 項目 | なぜ要るか | |—|—| | 品名 | 冷蔵庫・製氷機・フライヤーなど。分かる範囲で | | メーカーと型番 | 金額に最も効きます。本体に貼られた銘板を撮影すれば確実 | | 年式(製造年) | 銘板に入っていることが多い。中古市場での値の付き方が変わります | | 状態 | 動くか/不具合があるか。不具合は隠さず書く |
銘板の写真を撮っておけば、書き写す必要はありません。冷蔵庫なら扉の内側や側面、製氷機なら背面や側面にあります。
この段階で、リース物件と自己所有を分けておいてください。リース中の機器は勝手に売れません。扱いはリース機器がある場合の閉店手続きにまとめています。
手順2:搬出経路を撮る
金額を左右する要素として、機器そのものと同じくらい大きいのが「どうやって外に出すか」です。
大型の冷蔵庫やフライヤーは、入ったときと同じ経路でしか出せません。エレベーターのない2階、狭い階段、細い通路、道路付けの悪い立地——ここが厳しいと、買取額から搬出の手間が差し引かれるか、そもそも引き取り不可になります。
撮っておく写真は5枚です。
1. 店舗の入口(幅が分かるように) 2. 入口から厨房までの通路 3. 階段・エレベーター(ある場合。扉の幅が分かるように) 4. 建物の前の道路(トラックが停められるか) 5. 搬出対象の機器の設置状況(周囲に何があるか)
詳しくは搬出経路が査定額に与える影響にまとめています。先に伝えておくと、当日「これは出せません」で話が止まる事態を避けられます。
手順3:3社前後に、同じ情報を渡す
1社だけでは、提示された金額が高いのか安いのか判断できません。かといって10社に声をかけると、日程調整だけで疲弊します。3社前後が現実的です。
このとき大事なのは、全社に同じ情報を渡すことです。
- 手順1のリスト(型番・年式つき)
- 手順2の搬出経路の写真
- 閉店日と、明け渡しの期限
- 現地確認に来られる候補日
期限は必ず伝えてください。「来月末までに空にする必要がある」という条件は、金額と段取りの両方に影響します。
なお、業者にはいくつか種類があり、得意な範囲が違います。違いはリサイクル業者・不用品回収・産廃業者のちがいにまとめています。
手順4:「無料」の範囲を確かめる
ここが最もトラブルになる箇所です。
「出張査定無料」「搬出無料」と書かれていても、どこまでが無料かは業者によって違います。しかも、無料でないぶんが買取額から差し引かれる形だと、金額の見た目だけでは気づけません。
次の5つを、一つずつ聞いてください。
- 出張・査定は無料か(来るだけで費用が発生しないか)
- 搬出作業は無料か(人件費・養生費が別立てでないか)
- 値が付かない物の引き取りは無料か、有料か
- 有料の場合、買取額から相殺されるのか、別途請求か
- キャンセルした場合に費用が発生するか
「トータルでいくら手元に残るのか(あるいは、いくら払うのか)」——最終的に見るのはこの1点です。買取額の大きさだけで比べないでください。
手順5:値が付かない物をどうするか決める
厨房の中身は、売れる物と売れない物が必ず混在します。
- 値が付きやすい — 年式の新しい大型機器、業務用として需要のある定番機種
- 値が付きにくい — 古い機器、故障品、造作、消耗した什器、食器の一部
売れない物を残したままでは、明け渡しができません。そこで選択肢は3つです。
1. 買取業者にまとめて引き取ってもらう(有料になることが多い) 2. 廃棄物として処分する(事業者から出るものは事業系廃棄物の扱いになります。手続きは閉店時の廃棄物処分へ) 3. 居抜きで次の借り手に渡す(造作ごと引き継げる場合)
買取と処分を別々の業者に分けると、日程調整が二重になります。まとめて頼めるかどうかは、選ぶときの判断材料になります。
機器がどのくらいで見られるのかの考え方は厨房機器の買取相場の考え方、査定が下がる要因は査定額を下げてしまう要因にまとめています。
手順6:契約前に、書面で確認する
口頭で話が進んでいても、契約の前に必ず書面を見てください。
確認する5点
- 見積書の内訳(買取額・作業費・処分費が分かれているか。「一式」だけになっていないか)
- 当日の追加費用が発生する条件(何があると増えるのか)
- キャンセル料(いつから発生するか)
- 作業日と作業時間(明け渡しの期限に間に合うか)
- 支払いの時期と方法
そして、業者側については次を確認します。
- 古物商許可の有無——中古品を買い取る事業には古物商許可が必要です。許可番号を掲げているかは、確認できる材料の一つです
- 廃棄物を扱う場合の許可——処分まで頼むなら、その業者が扱える範囲かどうか
- 実績の確認——同じ規模・同じ業態の店を扱った経験があるか。具体的に聞くと、答え方で分かります
その場で契約を求められたら、一度持ち帰ってください。急かす理由が正当なことは、あまりありません。
やってはいけないこと
- 掃除のつもりで機器を分解しない。元に戻らないと値が付きません
- 銘板のシールを剥がさない。型番・年式が分からなくなると、査定が一段下がります
- 不具合を隠さない。当日に発覚すると、その場で金額が変わるか、作業が止まります
- 1社の言い値で決めない。比較しないと、判断の基準が持てません
- 明け渡し日ギリギリに動かない。日程が取れないと、選ぶ余地がなくなります
閉店全体の逆算スケジュールは閉店スケジュールの立て方を、手続き全体は閉店手続きチェックリストをご覧ください。
よくある質問
Q. 何社に声をかけるのが適切ですか。 A. 3社前後が現実的です。同じリストと写真を渡し、同じ条件で比べられる形にすることのほうが、社数を増やすより効きます。
Q. 見積もりだけ取って断ってもいいですか。 A. 構いません。ただし、キャンセル料の発生条件は先に確認してください。現地に来てもらった時点で費用が発生する業者もあります。
Q. 買取額が業者によってかなり違います。なぜですか。 A. その業者が販売先を持っているかどうかで変わります。特定の機種に強い業者は高く出せますし、逆に扱えない物は低くなります。違うこと自体は不自然ではありません。内訳を見て、何が高く、何が低いのかを確かめてください。
Q. 造作も一緒に売れますか。 A. 造作は買取ではなく、居抜きで次の借り手に譲渡する形が一般的です。居抜き売却と造作譲渡に、原状回復との損得の比較も含めてまとめています。
まとめ
- 業者を探す前に、機器リスト(品名・型番・年式・状態)と搬出経路の写真を作る
- 3社前後に、同じ情報を渡す。期限も伝える
- 「無料」の範囲を5点確認する。買取額の大きさではなく、最終的に手元に残る額で比べる
- 値が付かない物の扱いを、同時に決めておく
- 契約前に見積書の内訳・追加費用・キャンセル料・作業日・支払いを書面で確認する
- その場で決めない。持ち帰る
準備に半日かければ、提示される条件は変わります。急いでいるときほど、リストと写真を先に作ってください。

コメント