店を閉めた「その後」にやること|閉店日の翌日から確定申告まで、期限の早い順に並べる(個人事業の店)

閉店日の夜、店の鍵を閉めた時点で終わるのは「営業」だけです。届出・解約・お金の片付けは、そこから期限がばらばらにやって来ます。しかも期限の短いものほど、閉店前後の慌ただしさの中で忘れられがちです。

この記事は、個人事業として店をやっていた方を前提に、閉店日の翌日から翌年の確定申告までにやることを期限の早い順に並べたものです。それぞれの詳しい手順は、個別の記事にリンクしています。

この記事で答えられること: – 閉店後の手続きは「すぐ」「1か月以内」「確定申告まで」「その後も続く」の4つの帯に分かれる – 税の届出は2026年から期限が変わったものがある(廃業届は確定申告期限まで) – 閉店後に出た費用も、廃業した年の経費にできる場合がある

⚠️ 法人の店は、ここに書く手続きの多くが違います。法人は解散・清算の手続きと、法人税・社会保険の手続きが別に要ります。法人の場合は、この記事の順番をそのまま当てはめず、顧問の税理士・司法書士に確認してください。

先に全体像:期限の早い順に4つの帯

帯主なこと期限の目安(個人事業の店)詳しい記事
① 閉店直後〜数日ネット上の店の情報を閉じる/お客様の前払いの払い戻し/従業員の社会保険・雇用保険の届出(店が適用事業所だった場合)社会保険・雇用保険は5日・10日など短いネットの情報の店じまい・お客様の前払いの片付け方・事業主が出す届出
② 1か月以内給与支払事務所等の廃止届出書(従業員に給与を払っていた場合)廃止の日から1か月以内閉店後の税金の手続き
③ 確定申告まで個人事業の開業・廃業等届出書/最後の確定申告/消費税の事業廃止届出書(課税事業者だった場合)廃業した年分の確定申告期限まで(消費税の届出は「速やかに」)閉店後の税金の手続き
④ その後も続く帳簿・書類の保存/残った借入やリースの返済/解約したはずの引き落としの確認書類は税は7年など書類はいつまで残すか・借入金・負債の行き先

営業許可の返納(保健所)や消防・警察への届出は、閉店の前後で出すものです。まだの場合は飲食店を閉めるときの届出はどこへ出す?を先に見てください。

① 閉店直後〜数日:止めないと「人に迷惑がかかる」もの

ネット上の店の情報

閉店後もGoogleマップやグルメサイトに「営業中」と出ていると、来店したお客様が閉まった店の前で困ります。閉店日のうちに閉業の表示へ切り替えるのが目安です。手順は閉店したのに、店がネットに残っているにまとめています。

お客様の前払い

回数券・チャージ残高・予約金・キープボトルなど、お客様からお金を先に受け取っているものは、閉店後に問い合わせが来ます。閉店日の時点で残高を集計しておくと、その後の対応が早くなります。法律上の払い戻しの義務がかかる場合とかからない場合があるので、お客様の前払いの片付け方で確かめてください。

従業員の社会保険・雇用保険

従業員を雇っていた場合、退職にともなう届出は期限が日単位で短いものがあります。ただし健康保険・厚生年金保険の手続きが要るのは、店が適用事業所だった場合だけです。個人事業の飲食店は、常時5人以上を雇っていても法律で強制適用になる業種に入っておらず、任意で適用を受けていなければ対象外です。雇用保険は、雇っていた人が加入していれば手続きが要ります。どれが自分の店に当てはまるかは従業員を雇っていた店を閉めたあと、事業主が出す届出で確認してください。

② 1か月以内:給与を払っていた店の届出

従業員に給与を払っていた店は、給与支払事務所等の廃止届出書を税務署に出します。期限は廃止の事実があった日から1か月以内です(所得税法第230条)。

ここは次の③と期限が違うので、混同しないでください。家族だけで回していて給与を払っていなかった場合は、この届出はありません(青色事業専従者給与を払っていた場合は給与を払っていたことになるので、税務署に確認してください)。

③ 確定申告まで:税の届出と最後の申告

個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)

2026年1月1日以後に廃業した場合、提出期限は「廃業した年分の確定申告期限まで」です(所得税法第229条:「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない」)。以前は「廃業の日から1か月以内」でしたが、改正で変わりました。古い情報のまま「1か月以内」と書いている解説もあるので注意してください。

青色申告の取りやめ届出書は、事業をすべてやめたなら要らない

事業をすべて廃止した場合、青色申告の承認は翌年分から効力を失うため、取りやめの届出書は出さなくてよい扱いです(2026年1月1日以後)。店のほかに事業所得・不動産所得がある場合は扱いが変わるので、税務署に確認してください。

消費税の事業廃止届出書

消費税の課税事業者だった場合だけ、事業廃止届出書を「速やかに」出します(消費税法第57条第1項第3号)。免税事業者だった場合は対象外です。インボイスの登録をしていた場合の扱いも含め、税務署に確認してください。

最後の確定申告

廃業した年の分も、翌年の確定申告期間に申告します。閉店の年は、設備を売った代金・在庫の処分・解約の違約金・原状回復費用など、いつもの年にはないお金の出入りがあります。

  • 設備を売った代金は、個人事業では原則として事業所得ではなく譲渡所得として扱われます(取得価額10万円未満の物など、事業所得になる例外があります)。
  • 個人事業では、事業用の固定資産を売って出た損は、事業の必要経費になりません。

この2点は法人の店とは扱いが逆になるところで、間違えやすい部分です。詳しくは飲食店を閉めたあとの税金の手続きを見てください。

④ その後も続くこと

閉店後に出た費用は、廃業した年の経費にできる場合がある

閉店後に原状回復の追加請求が来た、リースの残りを払った——というように、店をやめた後に、店の事業に関わる費用や損失が出ることがあります。個人事業の場合、こうした費用は、やめなかったとすれば必要経費になったはずのものについて、廃業した年分(またはその前年分)の必要経費に算入できる扱いがあります(所得税法第63条)。すでに申告を済ませた後なら、申告を直す手続きが要り、これにも期限があります。閉店後に店のお金が出ていったら、領収書を捨てずに税務署か税理士に相談してください。

書類の保存

店を閉めても、帳簿や従業員の書類はすぐには捨てられません。税の帳簿は7年、労務の書類は5年(当分の間3年)が目安です。顧客名簿のように「使い終わったら消す」ほうがよいものもあります。詳しくは帳簿や従業員の書類はいつまで残すのかにまとめています。

借入・リース・引き落とし

店を閉めても、借入金やリースの返済は続きます。保証付きの融資や個人保証がある場合の行き先は閉めたあとに残る借入金・負債はどうなる?で整理しています。また、閉店後しばらくは通帳とクレジットカードの明細を毎月見て、止め忘れた引き落としがないかを確かめてください。止め忘れやすい契約は閉店したのに引き落としが止まらない、決済端末の入金と解約の順番はPOSレジ・キャッシュレス決済の解約にあります。

オーナー自身の生活の手続き

店を閉めたオーナー自身が失業保険の対象になるかは、開業の前に会社員だったかどうかなどで分かれます(オーナー自身は失業保険をもらえるのか)。小規模企業共済に入っていた場合は、事業をすべてやめたときの共済金の請求があります(小規模企業共済と経営セーフティ共済はどうなるのか)。

よくある質問

廃業届は閉店の翌日に出さないといけませんか?

2026年1月1日以後の廃業なら、期限は廃業した年分の確定申告期限までです(所得税法第229条)。早めに出しても構いませんが、「1か月以内」ではありません。ただし、給与支払事務所等の廃止届出書は1か月以内なので、従業員がいた店は先にこちらを出してください。

閉店後に残った厨房機器を売ったお金は、いつの所得になりますか?

売った日の年の所得として扱うのが基本です。閉店の翌年に売った場合は、翌年分の申告に関わることがあります。個人事業では原則として譲渡所得になるので、売る前に閉店後の税金の手続きを見て、必要なら税理士に確認してください。売れる物と処分する物の分け方は飲食店を閉めるときの処分方法にあります。

法人の店でも、この順番で進めればいいですか?

いいえ。法人は解散・清算の登記、法人税の申告、社会保険の適用事業所の全喪の届出など、個人事業とは手続きが別です。この記事は個人事業の店を前提にしているので、法人の場合は顧問の税理士・司法書士に確認してください。

まとめ

  • 閉店後の手続きは「すぐ」「1か月以内」「確定申告まで」「その後も続く」の4つに分けると、抜けが見つけやすくなります。
  • 2026年1月1日以後の廃業は、廃業届の期限が確定申告期限までに変わりました。給与支払事務所等の廃止届出書は1か月以内のままです。
  • 社会保険の手続きは店が適用事業所だった場合だけ、消費税の事業廃止届出書は課税事業者だった場合だけです。
  • 閉店後に出た費用も、廃業した年の経費にできる場合があります。領収書は捨てずに相談してください。

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※税・社会保険の期限と扱いは、2026年10月17日に e-Gov 法令検索の条文(所得税法第63条・第229条・第230条、消費税法第57条)で確認した内容です(確認日:2026-10-17)。制度は改正されることがあります。実際の手続きは、所轄の税務署・年金事務所・ハローワーク、または税理士・社会保険労務士にご確認ください。

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