まず全体像——届け先は大きく4つに分かれる
閉店にともなう届出は、目的別に4系統あります。ここを混ぜて考えると抜けが出ます。
| 系統 | 届け先 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 営業許可 | 管轄の保健所 | 食品営業の廃業届、営業許可証の返納 |
| 防火・消防 | 所轄の消防署 | 防火管理者に関する届出、消防用設備等に関する手続き |
| 酒類・深夜営業 | 所轄の警察署(該当する店のみ) | 深夜酒類提供飲食店営業などの廃止に関する届出 |
| 税・社会保険 | 税務署/都道府県税事務所/年金事務所・労基署・ハローワーク | 廃業に関する届出、従業員の資格喪失手続き |
このうち4つめについては飲食店を閉めたあとの税金の手続きで個人事業と法人の違いを含めて扱っています。本記事では、上の3つ(許認可まわり)を中心に見ていきます。
保健所——営業許可は「返す」もの
飲食店営業の許可は、食品衛生法にもとづいて保健所(都道府県知事等)が出しています。営業をやめたときは、その旨を保健所へ届け出るのが基本の流れです。
提出するもの・期限
- 廃業(廃止)の届出書——名称は自治体によって「廃業届」「営業廃止届」などと異なります
- 営業許可証(原本)——返納を求められるのが一般的です。紛失している場合は事情を伝えれば別の扱いになることがあります
期限については、「廃止した日から10日以内」としている自治体が多く見られます。ただし様式・提出方法(窓口/郵送/電子申請)・添付書類は自治体ごとに異なるため、必ず管轄の保健所の案内を確認してください。「(市区町村名または保健所名)+営業許可 廃業届」で公式ページが見つかります。
出さないとどうなるか
実務上いちばん困るのは、罰則よりも許可が残ったままになることです。更新の案内が届き続けたり、施設の使用実態と記録が食い違ったりします。同じ物件に次の借り手が入って営業許可を取ろうとするとき、前の許可の整理がついていないと確認に時間がかかることがあります。居抜きで次のテナントへ引き継ぐ予定があるなら、なおさら早めに処理しておくほうがきれいです。
あわせて確認したいこと
- 食品衛生責任者——資格そのものは店に紐づくものではありませんが、届出内容に関わることがあります
- 貯水槽・井戸水を使っていた場合——水質管理に関する届出が別にあることがあります
- 菓子製造業・そうざい製造業など、複数の許可を持っている場合——許可の数だけ手続きが必要です。1枚出せば全部終わりではありません
消防署——防火管理者と設備の扱い
一定規模以上の店舗では、消防法にもとづき防火管理者を選任し、所轄の消防署へ届け出ています。閉店にともなって、この届出の扱いを整理する必要があります。
- 防火管理者に関する届出——選任していた場合、廃止・変更にあたる届出が必要になることがあります
- 消防用設備等の点検・報告——建物全体の設備は貸主側の管理であることが多く、店舗側の範囲がどこまでかは賃貸借契約と原状回復の範囲によって変わります
- 火を使用する設備の届出——厨房設備の設置時に届出をしている場合、撤去にあたって扱いを確認しておくと安全です
警察署——深夜に酒を出していた店は要確認
次のいずれかに当てはまる店舗は、警察署への届出が関係します。
- 深夜0時以降に主として酒類を提供していた(深夜酒類提供飲食店営業の届出をしている)
- 接待をともなう営業をしていた(風俗営業の許可を受けている)
- 店内で古物の売買をしていたなど、別の許可を取得している
これらは営業を始めるときに届出・許可を取っているはずのものなので、やめるときにも手続きが必要になります。ご自身の店がどれに該当するかは、開業時の書類一式を確認するのが確実です。該当するかどうか判断がつかない場合は、所轄の警察署(生活安全課)に問い合わせてください。
営業最終日から逆算する
届出の多くは「やめたあと」に出すものですが、準備は営業中に終わらせておくほうが圧倒的に楽です。閉店後は鍵を返してしまい、店に入れなくなることがあるからです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 営業最終日の1か月前まで | 営業許可証・開業時の届出書類一式を探して手元にまとめる/管理会社に消防関係の確認 |
| 営業最終日の2週間前まで | 管轄の保健所・消防署・警察署に「必要な届出と様式」を電話で確認 |
| 営業最終日 | 掲示物・許可証の回収(什器の搬出前に) |
| 閉店後すみやかに | 保健所へ廃業届+許可証の返納/消防・警察の届出/税務関係の届出 |
全体のスケジュールの組み方は引き渡し日から逆算するスケジュールの立て方にまとめています。届出は、什器の搬出・原状回復・明け渡しと並行して進む工程だと考えてください。
届出と同時に動き出す「モノ」の話
許認可の整理と並行して、厨房機器・什器の行き先も決めていくことになります。ここで順番を間違えると、まだ値段がつくものを処分費を払って捨てることになります。搬出の直前に慌てて決めるより、営業中に一度査定を受けておくほうが選択肢が残ります。
当サイトは飲食店の閉店に関する情報をまとめたメディアで、買取そのものは行っていません。ご希望があれば、提携している買取業者へのお取次ぎという形でご案内しています。
よくある質問
閉店したあと、保健所への届出を出し忘れていました。今からでも出せますか?
気づいた時点で管轄の保健所へ連絡してください。遅れたことを理由に受け付けてもらえない、ということは通常ありません。事情を説明すれば、必要な手続きを案内してもらえます。放置して営業許可が残ったままになるほうが、後の問題が大きくなります。
店を人に譲る(居抜きで引き継ぐ)場合も、廃業届は必要ですか?
営業許可は原則として営業者に対して出されるものなので、設備をそのまま引き継いでも、許可がそのまま引き継がれるとは限りません。新しく営業する方があらためて許可を取る必要があるかどうかを含めて、譲渡の前に管轄の保健所へ確認してください。相続・法人の合併など、事情によって扱いが異なる場合があります。
法人を残したまま、店舗だけ閉める場合はどうなりますか?
店舗の営業許可に関する届出は、法人を存続させるかどうかとは別に必要です。「法人はまだあるから何もしなくてよい」とはなりません。一方、税務や社会保険の扱いは法人を残すかどうかで変わるため、そちらは税理士・社会保険労務士にご相談ください。
届出を代行してもらうことはできますか?
行政書士に依頼できる手続きがあります。店舗数が多い、遠方に移ってしまった、営業最終日から時間が経っているなど、ご自身で窓口に行きにくい事情があるなら検討の余地があります。費用と手間を比べて判断してください。

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