この記事では、閉店後に残るお金を4つに分けて、請求先がどう移っていくのか、法人を清算しても経営者個人の保証がどう扱われるのか、そして払えないと分かった時点でどこへ相談できるのかを整理します。個別の結論は事情によって変わるため、本記事では断定しません。判断の前に必ず専門家・公的窓口にご相談ください。
まず全体像——閉店後に残る「4種類のお金」
閉店の相談で「借金が残っている」と言われるとき、中身を聞くとたいてい性質の違うものが混ざっています。まず紙に分けて書き出すところから始めてください。相談先も、優先順位も、ここで変わります。
| 種類 | 例 | 閉店後の請求先 | 最初の相談先 |
|---|---|---|---|
| ① 金融機関からの借入 | 日本政策金融公庫、銀行・信用金庫の融資 | 返済が滞ると、保証付き融資では信用保証協会へ移ることがある(下記②) | 借りている金融機関の担当者 |
| ② 保証付き融資の代位弁済後 | 信用保証協会の保証が付いた融資 | 協会が金融機関へ肩代わりした後は協会が請求元になる | 保証している信用保証協会 |
| ③ リース・割賦の残債 | 厨房機器、POSレジ、券売機、看板 | リース会社。中途解約時の残リース料の扱いが契約で決まっている | リース会社(契約書を手元に) |
| ④ 取引先・その他 | 買掛金、家賃の未払、税金・社会保険料 | 各取引先/税務署・年金事務所・自治体 | 各窓口(税と社会保険は猶予の制度がある) |
保証付き融資は、返済が止まると請求先が変わる
創業融資や運転資金で、信用保証協会の保証を付けて借りている飲食店は多くあります。この形の融資では、返済ができなくなったとき、次の順で動くのが一般的です。
- 金融機関への返済が滞る
- 金融機関が信用保証協会に保証の履行を求める
- 信用保証協会が金融機関へ肩代わりして支払う(代位弁済)
- その後、協会が借りた本人に対して支払いを求める(求償権)
ここで大事なのは、代位弁済は「借金が消えること」ではないという点です。請求してくる相手が金融機関から信用保証協会に変わるだけで、返す義務そのものは残ります。ただし協会側にも返済方法の相談窓口があり、生活と収入の実情を踏まえた分割の相談に応じる運用が行われています 要確認。金額・期間・条件は個別事情によって異なります。
法人を畳んでも、個人の保証は自動では消えない
法人(株式会社・合同会社)で店をやっていた場合、「会社を清算すれば借入も終わる」と考えてしまう方がいますが、多くの中小事業者の融資では経営者本人が連帯保証人になっています。この保証は、法人の清算とは別の契約です。法人がなくなっても、保証した個人への請求は残り得ます。
一方で、経営者の個人保証をめぐっては「経営者保証に関するガイドライン」という取り決めが金融界の自主的なルールとして定められており、一定の要件のもとで、保証債務の整理にあたって手元に残せる財産の範囲を通常より広く考える、保証債務の減免を検討するといった枠組みが用意されています 要確認。法的拘束力の位置づけや適用の可否は個別判断になるため、「使えるかどうか」を自分で決めず、取引金融機関と専門家の双方に確認してください。
リース残債は「機器を返せば終わり」ではないことがある
厨房機器やPOSレジをリースで導入している店は多く、閉店時にもっとも認識のずれが出るのがここです。リースは「借りている」だけで、勝手に売ることはできません。そして中途解約の際に残りのリース料相当額の一括支払いを求められる契約が一般的です。
- 契約の種類(リースか、割賦か、所有権留保付きの売買か)
- 中途解約時の規定損害金の計算方法
- 機器の返還方法と原状回復の負担(撤去費用は誰が持つか)
- 保証人の有無
詳しい扱いはリース機器がある店の閉店にまとめています。売れる機器と、売ってはいけない機器(リース物件・所有権留保)を先に分けることが、トラブルを避ける最短の道です。
払えないと分かった時点で相談できるところ
「督促が来てから」ではなく、「このままだと払えない」と分かった時点が相談の適期です。早い段階のほうが、選べる手が多く残ります。
| 相談先 | どんなときに | 探し方 |
|---|---|---|
| 取引している金融機関の担当者 | 返済条件の見直し(返済猶予・期間延長)を相談したいとき | 通帳・返済予定表に記載の支店へ |
| 信用保証協会 | 保証付き融資で、すでに代位弁済に進んでいる/進みそうなとき | 保証付き融資には保証書があり、保証している協会名が書かれています(各都道府県に設置) |
| 中小企業活性化協議会 | 事業の再生や、債務の整理の進め方を公的な立場で相談したいとき | 各都道府県の商工会議所等に設置。所在地の名称を検索するか、商工会議所に問い合わせを |
| 商工会議所・商工会、よろず支援拠点 | 何から手を付けるか整理したいとき(無料相談の枠がある) | 市区町村名+機関名で確認 |
| 弁護士 | 個人保証、破産・再生など法的整理を検討するとき | 各地の弁護士会の相談窓口 |
| 税務署・年金事務所・自治体の納税担当 | 税・社会保険料が払えないとき(猶予・分割の相談) | 納付書に記載の窓口 |
閉店の作業を進めるうえで、気をつけたい順番
債務が残る見込みのある閉店では、片付けの手順そのものが後の話し合いに影響することがあります。とくに次の2点は、動く前に確認してください。
- 特定の支払先だけを先に払ってよいか。法的整理を検討している段階で、一部の債権者にだけ返済すると、後の手続きで問題として扱われることがあります 要確認。弁護士に相談中であれば、支払いの前に必ず確認してください
- 資産(厨房機器・什器)を処分・売却してよいか。リース物件や所有権留保の機器は売れません。また、法的整理を視野に入れている場合、売却代金の扱いを含めて先に相談すべきです
やめどきの判断そのものに迷いがある段階なら、飲食店のやめどきの判断と閉店にかかる費用の総額を先に読んで、「閉めるのにいくらかかるのか」を数字にしてから相談に行くと話が早く進みます。手続き全体の抜け漏れは閉店手続きチェックリストで確認できます。
よくある質問
Q. 個人事業主として借りています。廃業届を出せば返済は終わりますか。
いいえ。個人事業では、事業の借入も個人の債務です。廃業届は税務上の手続きであり、返済義務とは別のものです。返済が難しい場合は、廃業の届出とは切り離して、借入先と返済方法の相談を進めてください。
Q. 会社を清算すれば、社長個人への請求はなくなりますか。
連帯保証をしている場合、法人の清算だけでは保証債務は当然には消えません。保証の有無は契約書で確認できます。保証債務の整理については、前述の「経営者保証に関するガイドライン」に基づく取扱いを検討できる場合があります 要確認。適用の可否は個別判断のため、取引金融機関と弁護士の双方に確認してください。
Q. 代位弁済の通知が届きました。何をすればいいですか。
通知を出した信用保証協会に連絡を取ってください。連絡が取れている状態を保つことが最優先です。返済の相談にあたっては、収入と生活費、ほかの債務の一覧を用意しておくと話が進みます。金額の大きさや他の債務との兼ね合いによっては、弁護士への相談を並行することも検討してください。
Q. 家賃の未払いがあるまま閉めると、どうなりますか。
賃貸借契約に基づく債務として残り、敷金・保証金からの充当や、連帯保証人への請求という形で表面化します。原状回復費用と相殺されることも多いため、明け渡しの条件と精算方法を書面で確認してください。敷金と解約予告の考え方は解約予告と敷金の精算で扱っています。
Q. まだ営業していますが、資金が続きそうにありません。今できることはありますか。
返済条件の見直し(リスケジュール)を金融機関に相談する、公的窓口で整理の方針を相談する、といった手があります。資金が完全に尽きる前のほうが、選べる方法は多く残ります。店をたたむと決める前でも相談は可能です。
まとめ
- 閉店後に残るお金は4種類(金融機関の借入/保証付き融資の代位弁済後/リース残債/取引先・税金)。まず分けて書き出す
- 保証付き融資は、代位弁済によって請求元が信用保証協会に移る。借金が消えるわけではないが、返済の相談窓口はある
- 法人を清算しても、経営者個人の連帯保証は自動では消えない。「経営者保証に関するガイドライン」に基づく整理を検討できる場合がある
- リースは返せば終わりとは限らない。契約書で中途解約の規定を先に読む
- 相談は督促が来てからではなく、払えないと分かった時点。公的窓口は原則無料
- 法的整理を検討中は、一部だけの支払いと資産の処分を先に確認してから動く
閉店にあたって、厨房機器や什器の扱いに迷ったら、処分費を払って捨てる前に一度ご相談ください。当センターは買取を行う提携先へのお取次ぎを通じて、搬出と処分の段取りまでご案内しています。ただし、リース物件・所有権留保の機器は売却できません。また債務の整理を検討されている場合は、売却の前に弁護士など専門家へご確認ください。順番を守っていただくほうが、結果としてご負担は小さくなります。

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