閉店の買取は、まず厨房から始まります。 冷蔵庫、製氷機、コールドテーブル。ここは買取業者の主戦場で、話が早く進みます。
そのあとに、客席が残ります。 テーブル、椅子、ソファ、レジ台、食器棚、照明、看板メニュー。「これも一緒に持っていってもらえるだろう」と思っていると、当日に置いていかれます。
客席什器は、厨房機器とは値の付き方がまったく違います。 この記事では、その理由と、何に値が付いて何が処分費になるのか、造作と一体になっているものをどう扱うかを整理します。
厨房機器と値の付き方が違う、3つの理由
| 厨房機器 | 客席什器 | |
|---|---|---|
| 買い手 | 全国の中古厨房市場。需要が読める | 内装の好みに左右される。買い手が限られる |
| 判断材料 | 型番・年式・稼働で決まる | 見た目の状態。同じ椅子でも1脚ごとに違う |
| 数の効き方 | 1台単位で値が付く | 数が揃っていることが条件になりやすい |
いちばん大きいのは3つ目です。 厨房機器は1台でも売れますが、客席の椅子は「同じものが20脚」で初めて商品になります。 4脚だけ残った、あるいは3種類が混ざっている、という状態は、同じ品質でも値が付きにくくなります。
値が付きやすいもの
- 同一デザインでまとまった数の椅子・テーブル(10脚以上あると話が変わります)
- メーカーが分かる家具(業務用家具メーカー、あるいは知られたブランドのもの)
- 無垢材・木製の一枚板テーブル(傷があっても再仕上げが利くため)
- ソファ席・ベンチのうち、張地が傷んでいないもの
- 照明器具(ペンダントライト、デザイン性のあるもの)
- カウンターの上に載っているだけの什器(レジ台、ワゴン、什器棚)
共通しているのは「そのまま次の店で使える」ことです。 買い手は開業する人か、開業を支える業者です。彼らの目線は「これを自分の店に置けるか」の一点です。
値が付きにくい・処分費になるもの
- 店名やロゴが入っているもの(他店では使えません)
- サイズや形が特殊なもの(その物件に合わせて作られた造作家具)
- 張地が破れている・へこみがあるソファ(張り替え費用が値段を超えます)
- バラバラの椅子(数が揃っていない)
- 一般家庭用の家具(業務での使用に耐えない前提で見られます)
- 床・壁に固定されているもの(後述)
何に値が付くかの全体像は閉店するとき、何が売れて何が売れないのか、食器・グラス類は食器・グラスの買取にまとめています。
固定されているものは、買取ではなく「造作」の話になります
ここが客席什器のいちばんややこしい部分です。
床や壁に固定されたベンチシート、造作カウンター、作り付けの棚。これらは「什器」ではなく、物件に付いた造作として扱われます。
- 外して売る → 外す費用がかかり、外した跡の補修も必要になります
- そのまま残す → 居抜きで引き継ぐ相手がいる場合にだけ成立します
- 原状回復で撤去する → 費用が出ていく側になります
つまり、固定物の扱いは買取の話ではなく、原状回復と居抜きの話です。 どこまで戻す必要があるかは契約によって決まります <span>要確認</span>。範囲の考え方は店舗の原状回復はどこまでか、造作を譲渡する場合の進め方は造作譲渡の進め方を参照してください。
判断の順番は、「売れるか」より先に「動かしていいものか」です。 固定物を勝手に外して、あとで原状回復の対象だったと分かるのが、いちばん高くつきます。
査定を呼ぶ前にやっておく4つ
1. 数を数える ── 椅子は「同じデザインが何脚」まで。混在しているなら種類ごとに 2. メーカーと型番を探す ── 座面の裏、脚の内側にシールが残っていることがあります 3. 写真を撮る ── 全体を1枚、同じ椅子を1脚アップで1枚、傷んでいる箇所を1枚。この3枚で査定はかなり進みます 4. 固定物と可動物を分ける ── 動かせるものと、外す必要があるものをリストで分けておきます
そして、厨房機器と同じタイミングで見てもらってください。 ただし扱う業者が分かれることは珍しくありません。 厨房を買う業者が客席を見ないこともあれば、その逆もあります。一度で終わる前提を置かないほうが安全です。
順番を間違えると、売れるものが消えます
閉店の現場でよく起きるのが、「先に処分してしまった」です。
- 明け渡し日が迫り、とりあえず不用品回収を呼んだ
- そのとき、値の付く椅子とテーブルも一緒に運ばれた
- あとから買取業者が来て、残っていたのは処分費のかかるものだけだった
買取と処分は、必ず買取を先に通してください。 逆順にすると、戻せません。明け渡しまでの段取りは明け渡しと買取の順番、全体のスケジュールは閉店スケジュールの逆算にまとめています。
よくある質問
Q. 開業したときに買った金額の何割くらいで売れますか。 A. 購入価格からの逆算は、客席什器では当てになりません。 判断されるのは、次の店で使えるかどうかだけです。数が揃った状態の良い椅子は評価されますが、高価でも特注品は評価されにくいという逆転が普通に起きます。
Q. 値が付かないと言われました。処分費はどれくらいですか。 A. 量(体積と重さ)と搬出条件で決まります <span>要確認</span>。エレベーターの無い2階、道路からトラックまでの距離といった条件で変わります。 見積もりは現地を見てもらってください。
Q. 引き取りだけしてもらうことはできますか。 A. 可能な場合があります。 値は付かないが処分費もかからない、という「無償引き取り」の形です。ただし業者にとっても手間なので、量とタイミング次第です。 買取品と一緒であれば応じてもらいやすくなります。
Q. 椅子だけ、テーブルだけを売ることはできますか。 A. 数がまとまっていれば可能です。 ただし単品での引き取りは、出張費のほうが上回ることがあります。厨房機器や食器と合わせて、一度で見てもらうほうが結果は良くなります。
Q. 次に借りる人が「そのまま使いたい」と言っています。 A. 居抜きでの引き継ぎになります。 その場合、什器は買取に出さず、造作譲渡の対象として金額を決めることになります。相手の探し方は居抜きの引き継ぎ先の探し方を参照してください。
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本記事は、店舗の閉店にともなう客席什器の扱いについて、一般的な考え方を整理したものです(確認日:2026-08-25)。査定額・処分費用は現物の状態、数量、搬出条件、地域および事業者によって異なります <span>要確認</span>。什器が造作にあたるかどうか、原状回復の範囲は賃貸借契約の内容によって異なります。 実際の判断は、契約書の内容を確認のうえ、貸主・管理会社および各事業者にご確認ください。

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