閉店を決めたとき、多くの人は「いつ出るか」から考えます。その前に確認すべきものが1つあります。契約が定期借家か、普通借家かです。
この違いで、「途中でやめられるか」も「いつまでに何をするか」も変わります。先に見ておかないと、逆算したスケジュールが成立しません。
なお、以下は一般的な整理です。実際の効力はご自身の契約書の条項によって決まります。判断に迷う場合は、弁護士など専門家にご相談ください。
まず、自分の契約がどちらかを確認する
契約書の表題と、「契約期間」「更新」に関する条項を見てください。
| 見え方 | 該当する可能性 |
|---|---|
| 表題が「定期建物賃貸借契約書」 | 定期借家 |
| 「本契約は更新がなく、期間の満了により終了する」といった記載がある | 定期借家 |
| 契約書とは別に、「更新がない」ことを説明した書面を受け取っている | 定期借家 |
| 「期間満了の◯か月前までに申し出がないときは、同一条件で更新する」といった記載 | 普通借家 |
定期借家として成立するには、契約書とは別に、あらかじめ書面で説明を受けていることが要件とされています。表題だけで判断せず、契約時に受け取った書類一式を確認してください。
契約書のどこを読むかは店舗の賃貸借契約書はどこを読むかにもまとめています。
違いが出るのは、主に4つ
| 普通借家 | 定期借家 | |
|---|---|---|
| 契約の終わり方 | 更新される前提 | 期間の満了で終了(更新はなく、続けるには再契約) |
| 借主からの中途解約 | 解約予告の条項に従って可能なことが多い | 原則としてできない。中途解約の特約がある場合のみ |
| やめると決めてから出るまで | 予告期間(数か月)が目安 | 契約期間の残りに縛られる可能性がある |
| 満了が近いとき | 更新しない旨を伝える | 貸主からの終了通知が届く(期間が一定以上の契約の場合) |
閉店の相談で問題になりやすいのは、真ん中の2つです。
定期借家で、いちばん詰まりやすい点
中途解約は「できないのが原則」
定期借家は、期間が満了するまで続く前提で結ばれます。そのため、借主の側から途中でやめることは、契約に中途解約の特約がなければ難しいとされています。
特約がない状態で出ていく場合、残りの期間の賃料相当額を求められることがあります。「早めに出るのだから、その分安くなる」という発想は通用しません。
だから、閉店を検討し始めた時点で、まず契約書の「中途解約」の条項を探してください。
- 中途解約の特約がある——予告期間と、違約金の有無・金額を確認する
- 特約がない——貸主との相談になります。合意で終了できる場合があります。ここは交渉です
「特約がないから無理だ」と決めつけて動かないのが、いちばん損をします。空室にしたくないのは貸主も同じで、次のテナントが決まるなら応じてもらえることがあります。その意味で、居抜きで引き継ぎ先を探すことは、交渉材料にもなります(居抜きの引き継ぎ先はどう探すか)。
期間満了で終わるなら、逆算は楽になる
逆に、契約の満了日が近いなら定期借家は分かりやすい契約です。終わる日が決まっているからです。
満了日から逆算して、次を並べてください。
1. 満了日(=明け渡しの期限) 2. 原状回復工事の完了日——満了日の前に終わっている必要があります 3. 工事の着工日——工事期間は規模によります 4. 厨房機器・什器の搬出日——工事の前に空にする必要があります 5. 営業の最終日
多くの人が3〜4を短く見積もります。原状回復工事は、貸主の指定業者になっている場合に日程の自由が利きません(原状回復業者が指定されている場合)。逆算の組み方は閉店スケジュールの逆算にまとめています。
普通借家の場合に見るところ
普通借家は、借主からの解約予告の条項が中心になります。
- 予告期間は何か月か(店舗では3か月〜6か月といった設定が見られます。契約書の記載が正です)
- 予告は書面が必要か、宛先はどこか
- 予告期間に満たない場合、その分の賃料を払えば済むという定めがあるか
「言った・言わない」を避けるため、解約の申し入れは書面で、控えを残してください。予告期間と敷金の扱いは解約予告と敷金の扱いで整理しています。
どちらでも共通して確認すること
契約の型に関係なく、閉店では次が効きます。
- 原状回復の範囲——どこまで戻すのか。スケルトンか、造作を残せるのか(原状回復はどこまでやるのか)
- 原状回復の起算と期限——明け渡し日までに完了なのか、明け渡し後に工事なのかで、賃料の発生期間が変わります
- 敷金・保証金の償却——返ってくる金額の前提
- 造作を次のテナントへ譲渡してよいか——契約で禁じられていることがあります
とくに2番目は見落とされます。「明け渡し後に工事」の場合、工事期間中の賃料を求められることがあります。この1点で総額が数十万円単位で変わることがあるので、契約書の文言を確認してください。
迷ったときの順番
1. 契約書と、契約時に受け取った書面一式を集める 2. 「更新」「中途解約」「解約予告」「原状回復」の4つの条項に付箋を貼る 3. 満了日、または解約したい日を紙に書く 4. その日から逆算して、工事・搬出・営業最終日を置いてみる 5. 成立しないなら、貸主・管理会社に早めに相談する
5番を後回しにしないでください。条件の交渉は、期限が迫るほど不利になります。相談する順番は閉店を決めたら、どこから相談するかにまとめています。
よくある質問
Q. 契約書が見つかりません。 A. 管理会社か貸主に写しを求めてください。保管している場合があります。仲介した不動産会社に残っていることもあります。内容が分からないまま動かないでください。
Q. 定期借家でも、話し合いで途中でやめられますか。 A. 貸主が合意すれば終了できる場合があります。条件(違約金、次のテナント、原状回復の扱い)はその交渉次第です。一方的にできるかどうかと、話し合ってできるかどうかは別の話です。
Q. 満了で終わるなら、通知は要りませんか。 A. 定期借家では、期間が一定以上の契約について、貸主から終了の通知が行われるとされています。ただし、借主側でも再契約を希望しない旨を早めに伝えておくほうが段取りが進みます。通知の有無や時期は契約書と法令の定めによります。
Q. 原状回復と買取は、どちらが先ですか。 A. 買取(搬出)が先です。機器が残ったままでは工事に入れません。順番は明け渡しと買取の順番にまとめています。
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本記事は一般的な考え方の整理であり、個別の契約についての法的な判断を示すものではありません。契約の効力は個別の契約書の条項によって決まります。中途解約や違約金の可否など、金銭に直結する判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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