店を閉めて鍵を返しても、株式会社で営業していたなら、会社そのものはまだ残っています。店がなくなることと、会社がなくなることは別の手続きです。
ここで選べる道は大きく2つです。
| 解散・清算する(会社を畳む) | 休眠にする(会社を残す) | |
|---|---|---|
| 会社 | 清算結了の登記で消える | 残る(事業をしていないだけ) |
| 最低限かかる期間 | 債権者への公告だけで2か月以上 | ― |
| 登記 | 解散・清算人・清算結了 | 役員の任期ごとに変更登記 |
| 登録免許税 | 解散3万円+清算人9千円+清算結了2千円 | 役員変更のたびに1万円(資本金1億円以下) |
| 税務の申告 | 解散・清算の各事業年度 | 事業年度ごとに続く |
| 放置したとき | ― | 最後の登記から12年でみなし解散の対象 |
登録免許税は登録免許税法 別表第一 第24号の額です。司法書士・税理士の報酬や官報公告の費用は別にかかります。
この記事は株式会社を前提にしています。合同会社などの持分会社は解散の決め方(総社員の同意など、会社法第641条)や清算の手続きが一部違うため、専門家に確認してください。
解散・清算:会社を畳むときの流れ
株式会社を畳むときは、「解散」で事業をやめると決め、「清算」で財産と債務を片付け、最後に「清算結了」で会社が消える、という3段階を踏みます。
1. 株主総会で解散を決める(特別決議)
株主総会の決議による解散(会社法第471条第3号)は、特別決議が要ります。議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(第309条第2項第11号)。社長がほぼ全株を持つ会社なら、実際には社長1人の判断で決まります。
2. 解散と清算人の登記(2週間以内)
解散したら、2週間以内に本店所在地で解散の登記をします(第926条)。
清算の事務をする「清算人」は、定款で定めた人や株主総会で選んだ人がいなければ、それまでの取締役がそのまま就きます(第478条第1項)。取締役がそのまま清算人になった場合も、解散の日から2週間以内に清算人の登記が必要です(第928条第1項)。
登録免許税は、解散の登記が1件3万円、清算人の登記が1件9千円です(登録免許税法 別表第一 第24号)。
3. 官報で債権者に公告する(2か月以上)
清算に入った会社は、遅滞なく、債権者に対して「一定の期間内に債権を申し出てください」と官報に公告し、知っている債権者には個別に知らせなければなりません。この期間は2か月を下ることができません(第499条第1項)。
この期間中は、原則として債務の弁済ができません(第500条第1項)。少額の債権などは裁判所の許可を得て払える例外があります(同条第2項)。
ここが、清算に最低2か月以上かかる理由です。公告の期間を短くする方法はありません。店を閉めた月に会社も終わらせる、ということは手続き上できないと考えてください。
4. 財産を現金に換え、債務を払い、残りを分ける
清算人は、売掛金を回収し、設備や在庫などの財産を現金に換え、債務を払い、残った財産を株主に分けます。
店の厨房機器や什器を閉店時に売るか、清算の中で売るかは、日程と帳簿の付け方に関わります。明け渡し日までに店を空にしなければならないので、実際には閉店前後に売却を済ませ、その代金を清算の財産に入れることが多くなります。売却の順番は明け渡しまでに、買取をどの順番で入れるかにまとめています。
5. 決算報告の承認と清算結了の登記
清算の事務が終わったら、清算人は決算報告を作り、株主総会の承認を受けます(第507条)。承認の日から2週間以内に清算結了の登記をします(第929条)。登録免許税は1件2千円です。
清算結了の後も、清算人は清算結了の登記から10年間、会社の帳簿と事業・清算に関する重要な資料を保存します(第508条)。
解散した事業年度・清算中の事業年度ごとの申告など、税務の段取りは飲食店を閉めたあとの税金の手続きで扱っています。
財産より借金が多いときは、ふつうの清算では終われない
ここまでの流れは、財産で債務を払い切れる会社の話です。
- 清算の途中で、財産で債務を完済できないことが明らかになったら、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをしなければなりません(第484条第1項)
- 債務超過の疑いがあるときは、清算人は特別清算の開始を申し立てなければなりません(第511条第2項・第510条)
つまり、借入金やリースの残債が残っている会社は、「解散して清算すれば終わる」とは限りません。借入金の行き先と相談先は飲食店を閉めたあとに残る借入金・負債はどうなる?、廃業と倒産の違いは飲食店の廃業と倒産はどう違う?にまとめています。
休眠:会社を残すときに続く義務
「また店をやるかもしれない」「清算の手間と費用をかけたくない」という理由で、会社を残す人もいます。会社法に「休眠の届出」という手続きはなく、事業をしていないだけで、会社としての義務はそのまま続きます。
申告は事業年度ごとに続く
法人は、各事業年度の終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を出さなければなりません(法人税法第74条第1項)。事業をしていなくても、会社が残っている限りこの義務は続きます。
休眠中の法人住民税(均等割)の扱いや、休業を知らせる届出の出し方は、本店所在地の都道府県・市区町村と税務署で確認してください。自治体によって扱いが違います。
役員の任期が来たら登記が要る
取締役の任期は原則2年、株式の譲渡制限がある会社(公開会社でない会社)は定款で最長10年まで延ばせます(第332条第1項・第2項)。任期が来たら、同じ人が続ける場合でも役員の変更登記が必要です。登記は変更から2週間以内(第915条第1項)、登録免許税は1件3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)です。
登記を怠ると、取締役などは100万円以下の過料の対象になります(第976条第1号)。
12年登記がないと「解散したもの」とみなされる
最後の登記から12年たった株式会社は「休眠会社」として、法務大臣の官報公告の対象になります。公告から2か月以内に「事業を廃止していない」旨の届出も登記もしなければ、その期間の満了時に解散したものとみなされます(第472条第1項)。登記所からも通知が届きます(同条第2項)。
法務省によると、この整理作業は平成26年度から毎年1回行われています(令和7年度で第17回)。
みなし解散の後でも、3年以内なら株主総会の特別決議で会社を継続できます(第473条)。ただ、そのときは継続の登記などが別に必要になります。
どちらを選ぶかの目安
| こういう状況なら | 向いている道 |
|---|---|
| 店を再開する予定がない/会社の財産で債務を払い切れる | 解散・清算 |
| 1〜2年のうちに同じ会社で別の店を出す具体的な予定がある | 休眠(申告と登記を続ける前提で) |
| 借入金・リース残債が財産を上回っている | 清算ではなく、破産・特別清算・債務の整理を専門家に相談 |
| 店だけを人に引き継ぎたい | 閉店の前に、居抜き譲渡や第三者承継を検討 |
「とりあえず残しておく」は、費用がかからない選択ではありません。申告の手間、役員の登記、税理士の費用が毎年続きます。再開の予定がはっきりしないなら、閉店の時点で清算まで見積もっておくほうが、後から慌てずにすみます。
店そのものを人に引き継ぐ道は閉店する前に、もう一つの出口、閉店をやめて一時的に休む選択は「閉店」と「休業」はどこが違うのかを参考にしてください。
日程の組み方
解散・清算を選ぶ場合、店の閉店と会社の手続きは、次のように重ねて進めるのが現実的です。
- 閉店日と明け渡し日を決める:賃貸借の解約予告、従業員への通知、取引先への連絡
- 設備・在庫の売却と処分を進める:明け渡し日までに店を空にする
- 株主総会で解散を決議し、2週間以内に解散と清算人の登記
- 官報公告を出し、知っている債権者に個別に通知:ここから2か月以上
- 公告期間が過ぎたら債務を払い、残りを株主に分ける
- 決算報告の承認、2週間以内に清算結了の登記
1と2は店の段取り、3〜6は会社の段取りです。店の段取り全体は飲食店の閉店手続き完全ガイド、誰にどの順で相談するかは閉店の相談は、誰に・どの順番でするのかにまとめています。登記は司法書士、申告は税理士の仕事です。
まとめ
- 株式会社で店を経営していたなら、閉店しても会社は残る。畳むには解散・清算、残すなら休眠
- 解散は株主総会の特別決議。解散・清算人の登記は2週間以内
- 清算では官報で債権者に公告し、2か月以上待つ。この期間を短くする方法はない
- 登録免許税は解散3万円・清算人9千円・清算結了2千円(専門家報酬・公告費は別)
- 財産で債務を払い切れないなら、破産または特別清算の申立てが必要になる
- 休眠でも、事業年度ごとの申告と役員の変更登記は続く。最後の登記から12年でみなし解散の対象
- 清算した会社の帳簿資料は、清算人が清算結了の登記から10年保存する
出典(確認日:2026年10月9日)
- e-Gov法令検索「会社法」第309条・第332条・第471条〜第473条・第475条・第478条・第484条・第499条・第500条・第507条・第508条・第510条・第511条・第641条・第915条・第926条・第928条・第929条・第976条
- e-Gov法令検索「登録免許税法」別表第一 第24号
- e-Gov法令検索「法人税法」第74条
- 法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」
本記事は確認日時点の法令と公的機関の案内にもとづく一般的な整理で、個別の会社の手続きを判断するものではありません。法令や登録免許税の額は改正されることがあります。解散・清算・休眠の判断と手続きは、司法書士・税理士・弁護士などの専門家に最新の扱いを確認してください。
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