店を閉めたあと、帳簿や従業員の書類はいつまで残すのか|税金は7年、労務は5年(当分の間3年)、顧客名簿は「使い終わったら消す」

店を閉めると、書類の山が残ります。帳簿、レシートや請求書の控え、仕入先とのやり取り、従業員のタイムカード、予約台帳。店舗を明け渡す日が近づくと「全部まとめて捨ててしまいたい」と思うかもしれません。

ただ、これらの多くは保存期間が法令で決まっていて、その期間は閉店日では止まりません。期間の数え始め(起算日)が「閉店した日」ではなく「その年の翌年3月15日の翌日」や「従業員が退職した日」になっているためです。

先に結論を書きます。

書類期間数え始め根拠
個人事業の帳簿・決算書類(青色申告)7年(請求書・見積書などは5年のものもある)帳簿を閉じた年の翌年3月15日の翌日所得税法施行規則 第63条
個人事業の法定帳簿(白色申告)7年(任意帳簿・決算書類・請求書等は5年)同上所得税法施行規則 第102条
法人の帳簿書類7年(青色申告で欠損金が出た事業年度は10年)確定申告書の提出期限の翌日国税庁 No.5930
消費税の帳簿(課税事業者だった場合)7年課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日消費税法施行令 第71条
労働者名簿・賃金台帳・雇入れや退職の書類5年(当分の間は3年)退職の日・最後に記入した日など労働基準法 第109条・附則第143条
雇用保険の書類2年(被保険者に関する書類は4年)完結の日雇用保険法施行規則 第143条
健康保険・厚生年金保険の書類2年完結の日健康保険法施行規則 第34条・厚生年金保険法施行規則 第28条
清算した株式会社の帳簿・重要な資料10年(清算人が保存)清算結了の登記の時会社法 第508条
顧客名簿・予約台帳などの個人データ決まった年数ではなく、使う必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努める―個人情報保護法 第22条

以下、閉店する店で迷いやすい順に見ていきます。

税金の書類:閉店した年の分も、そこから7年

個人事業の場合

個人事業の帳簿と書類は、所得税法施行規則で保存期間が決まっています。青色申告の店は第63条、白色申告の店は第102条です。

  • 青色申告:帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)と決算書類(棚卸表・貸借対照表・損益計算書)は7年。取引の相手から受け取った注文書・契約書・送り状・領収書・見積書なども原則7年ですが、現金や預金の出し入れの際に作ったもの以外は5年でよいとされています。
  • 白色申告:収入と経費を書いた帳簿(法定帳簿)は7年。それ以外の帳簿(任意帳簿)、決算に関して作った書類、請求書・納品書・領収書などは5年です(国税庁 No.2080)。

数え始めは、帳簿なら「閉じた日の属する年の翌年3月15日の翌日」、書類なら「作った日・受け取った日の属する年の翌年3月15日の翌日」です(同第63条第4項)。

たとえば2026年中に閉店した店の帳簿は、2027年3月16日から数えて7年、つまり2034年3月15日まで残すことになります。閉店の年が最後の年分になるだけで、その年の分にも同じ期間がかかります。

法人の場合

法人の帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告で欠損金(赤字)が出た事業年度は10年間になります(国税庁 No.5930。平成30年4月1日より前に始まった事業年度は9年)。

どの事業年度が10年の側に入るかは、決算を担当した税理士に確かめてください。

消費税の課税事業者だった場合

消費税の課税事業者だった店は、消費税の帳簿も7年です。数え始めは「帳簿を閉じた日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日」です(消費税法施行令 第71条、国税庁 No.6621。申告期限の延長特例を受けている法人は3か月)。

閉店と税務の届出の順番は飲食店を閉めたあとの税金の手続きにまとめています。

従業員の書類:最後の退職日から数える

従業員を雇っていた店は、労働基準法第109条で次の書類を保存する義務があります。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類

条文の期間は5年ですが、附則第143条で当分の間は3年と読み替えられています。

数え始めは書類ごとに違います(労働基準法施行規則 第56条)。

  • 労働者名簿:労働者の死亡・退職・解雇の日
  • 賃金台帳:最後に記入した日
  • 雇入れ・退職に関する書類:労働者の退職または死亡の日
  • 賃金その他の重要な書類:その完結の日

さらに、賃金の支払期日のほうが遅い場合は、支払期日から数えます。閉店月の最後の給料を翌月に払った場合は、その支払日が起点です。

社会保険・労働保険の書類は別の規則で決まっています。

  • 雇用保険に関する書類:完結の日から2年。被保険者に関する書類は4年(雇用保険法施行規則 第143条)
  • 健康保険・厚生年金保険に関する書類:完結の日から2年(健康保険法施行規則 第34条・厚生年金保険法施行規則 第28条)

従業員に閉店を伝えてから退職までの手続きは飲食店の閉店、従業員への伝え方と解雇予告で扱っています。

会社を清算するなら、帳簿資料は清算人が10年

法人の店を閉め、会社そのものを解散・清算する場合は、会社法の決まりも加わります。株式会社の清算人は、清算結了の登記の時から10年間、会社の帳簿と、事業および清算に関する重要な資料を保存しなければなりません(会社法 第508条)。

会社がなくなった後も、書類を預かる人(清算人)は残るということです。清算人を誰にするかを決めるときに、10年分の書類をどこに置くかも一緒に決めておくと、後で探し回らずにすみます。

顧客名簿・予約台帳は「残す」より「消す」側

予約の電話番号、会員カードの登録情報、ポイントアプリの顧客データ、配達先の住所。これらは税金や労務の書類とは向きが逆です。

個人情報保護法 第22条は、個人データについて「利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない」としています。閉店して予約も配達も受けなくなれば、多くは「利用する必要がなくなった」状態に入ります。

迷いやすいのは、同じ紙に税金の記録と顧客の情報が載っている場合です。たとえば宛名入りの領収書の控えや、配達の伝票は、取引の書類として税法の期間がかかります。

  • 税法で保存が要る書類に載っている情報 → 書類ごと、期間まで保管する
  • 予約台帳・会員名簿・顧客アンケートなど、帳簿書類ではないもの → 閉店後の連絡(予約のキャンセル、前払いの払い戻しなど)が終わったら、消去・廃棄を進める

閉店時に残っている回数券・チャージ残高・予約金の連絡が先に要る場合は、閉店する店に残る「お客様の前払い」の片付け方を先に済ませてください。名簿はその連絡に使います。

POSレジやキャッシュレス決済のデータを解約前に書き出しておく話は、POSレジ・キャッシュレス決済は閉店したらすぐ解約していい?にあります。

閉店前の片付けで、書類をどう分けるか

店を明け渡す前の片付けでは、次の4つの箱に分けておくと迷いません。

  1. 税金の箱(7年):帳簿、決算書、申告書の控え、通帳、請求書・領収書の控え、仕入れの納品書。年ごとに分けて、表に「◯年分・保存は◯年◯月まで」と書く
  2. 従業員の箱(当分の間3年):労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・退職の書類。最後の給料の支払日を表に書く
  3. 保険の箱(2年・被保険者の書類は4年):雇用保険・社会保険の届出の控え
  4. 消す箱:予約台帳、会員名簿、顧客の連絡先。前払いの払い戻しなど閉店後の連絡が終わったら、シュレッダーやデータの削除で処分する

レジの記録や会計ソフトのデータのように電子で持っているものは、解約や機器の売却・処分の前に書き出してください。厨房機器やパソコン・タブレットを売ったり処分したりする前に、中のデータを消すことも忘れないようにします。

閉店までの段取り全体は引き渡し日から逆算するスケジュールの立て方、届出や契約の一覧は飲食店の閉店手続き完全ガイドで確認できます。

よくある迷いどころ

廃業届を出したら、保存しなくてよくなるのでは

保存期間の数え始めは「翌年3月15日の翌日」や「申告期限の翌日」「退職の日」で、廃業届を出した日ではありません。閉店した年の分も、そこから期間が進みます。

紙が多すぎて置き場所がない

個人事業の帳簿書類について、所得税法施行規則 第63条第5項は、起算日から一定の年数が過ぎた後は財務大臣の定める方法で保存できる場合を定めています。紙のまま残すか別の方法に切り替えるかは、切り替える前に税理士か税務署に確認してください。

誰に聞けばいいか

税金の書類は税理士か所轄の税務署、従業員の書類は社会保険労務士か労働基準監督署、会社の清算は司法書士・税理士が相談先です。相談の順番は閉店の相談は、誰に・どの順番でするのかにまとめています。

まとめ

  • 書類の保存期間は閉店日では止まらない。数え始めは「翌年3月15日の翌日」「申告期限の翌日」「退職の日」など
  • 税金:個人事業は7年(書類によって5年)、法人は7年(欠損金の年は10年)、消費税の帳簿も7年
  • 従業員:労働者名簿・賃金台帳などは5年(当分の間3年)。最後の給料の支払日が遅ければそこから
  • 雇用保険は2年(被保険者の書類は4年)、健康保険・厚生年金は2年
  • 株式会社を清算したら、清算人が清算結了の登記から10年帳簿資料を保存
  • 顧客名簿などの個人データは、閉店後の連絡が済んだら遅滞なく消去するよう努める

出典(確認日:2026年10月7日)

法令や様式は改正されることがあります。本記事は確認日時点の法令と公的機関の案内にもとづく一般的な整理で、個別の店の書類の扱いを判断するものではありません。処分する前に、税理士・社会保険労務士・税務署・労働基準監督署などで最新の扱いを確認してください。

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