閉店を決めたあと、多くの店が同じ順番で進みます。解約を通知して、原状回復の見積もりを取って、工事の日程を決めて、明け渡す。 業者に言われるまま進めると、自然にこの流れになります。
この順番の何が問題かというと、買取が入る場所がどこにもないことです。
原状回復の見積もりは、「店内のものを全部撤去して、スケルトンに戻すまで」でひとまとめに出てきます。 つまり、まだ使える冷蔵庫も、買って2年の製氷機も、状態のいいテーブルも、「撤去費用のかかる荷物」として計算されています。 売れば値が付いたはずのものに、逆にお金を払って運び出してもらう形です。
順番を変えるだけで、ここは変わります。この記事では、明け渡し日から逆算して、買取をどこに挟むのかを整理します。
先に結論:買取は「原状回復の契約前」に入れる
| 順番 | やること | ここでの判断 |
|---|---|---|
| 1 | 契約書で明け渡し日と原状回復の範囲を確認する | いつまでに、どこまで戻すのか |
| 2 | 店内のものを「売る/譲る/捨てる」に仕分ける | ここが分かれ目 |
| 3 | 買取の査定を受ける(複数社) | 売れるものの金額が確定する |
| 4 | 原状回復の見積もりを取る | 2・3で減った後の量で見積もる |
| 5 | 買取の引き取り日を、工事の着工前に置く | 搬出の順番を確定させる |
| 6 | 原状回復の工事 | |
| 7 | 明け渡し・鍵の返却 |
要点は4番です。 買取で運び出されるものは、原状回復の対象から消えます。 撤去する荷物が減るので、見積もりの前提そのものが変わります。先に工事を契約してしまうと、この差が反映されません。
なぜ、逆の順番になってしまうのか
理由ははっきりしています。明け渡し日が先に決まっていて、そこから工事の日程を押さえるのが最優先になるからです。
原状回復の工事は、日程が埋まっていると希望どおりに入りません。 特に年度末や、退去の多い時期は取り合いになります。「まず工事の枠を押さえないと間に合わない」という判断は、それ自体は正しいのです。
問題は、枠を押さえるのと、撤去の範囲を確定させるのを同時にやってしまうことです。 この2つは分けられます。
- 工事の日程だけ先に押さえる(範囲は後で確定させる、と伝えておく)
- その間に仕分けと査定を進める
- 量が確定してから、正式な見積もりを出してもらう
「日程は押さえたいが、撤去の範囲はまだ確定していない」と最初に言っておくこと。 これだけで、後から「もう見積もりに入っているので変更できません」と言われる場面が減ります。
仕分けは3つに分けるだけでいい
2番の仕分けは、細かくやると終わりません。次の3つに分けるだけで十分です。
① 値が付く可能性があるもの(売る) 厨房機器(冷蔵庫・冷凍庫・製氷機・フライヤー・オーブン・コールドテーブル)、空調、什器、カウンター、レジまわり、食器・グラス類のうちまとまった数があるもの。メーカー名と製造年が分かるものは、その場で写真を撮っておいてください。 査定が早くなります。
② 造作としてそのまま残せるもの(譲る) 内装、造作家具、ダクト、給排気。居抜きで次の借り手に渡せる場合、これらは撤去せずに済むことがあります。 ただし造作の譲渡は貸主の承諾が要る話なので、契約書と大家さんの意向の確認が先です。
③ 明らかに処分するもの(捨てる) 消耗品、開封済みの食材、破損しているもの、ロゴや店名の入ったもの。店名の入った物は原則として売れません。
この3分類だけで、原状回復の見積もりに乗せる量が決まります。
査定を受けるときに、順番として気をつけること
査定は、店を止める前に受けたほうが結果が良くなります。 通電した状態で動作を確認できるかどうかで、評価が変わるためです。電気を止めた後、冷えない・動かないものは「動作未確認」として扱われます。
- 営業中か、営業終了の直後に見てもらう
- 電気・ガス・水道を止める日を、査定と引き取りの後に置く
- 複数社に見てもらう(1社だけだと、その金額が高いのか安いのかが分かりません)
業者によって得意な品目が違い、同じ機器でも金額が変わります。どう選ぶかは、買取業者の選び方にまとめました。 また、「買取」と「リサイクル業者」「不用品回収」は役割が別で、頼む先を間違えると処分費だけがかかります。違いは閉店時に頼む業者の違いで整理しています。
搬出の順番が、いちばん揉める
見落とされやすいのがここです。買取と原状回復の工事は、別の業者が別の日に来ます。 順番を決めておかないと、次のようなことが起きます。
- 工事が先に入り、売るはずだった機器が撤去されてしまった
- 買取の引き取り日に工事の資材が入っていて、搬出経路が塞がっていた
- エレベーターや共用部の使用時間が重なり、片方が入れなかった
対策は単純で、買取の引き取り日を工事の着工日より前に確定させ、両方の業者に相手の日程を伝えることです。 ビルによっては搬出に使える時間帯や曜日が決まっているので、そこも先に管理会社へ確認してください。搬出経路の確認は厨房機器の搬出経路で詳しく扱っています。
明け渡し日から逆算した、おおまかな組み方
日数は物件と業者の混み具合で変わりますが、順番そのものは変わりません。
1. 明け渡し日を確定する(契約書の解約予告期間から決まります) 2. 原状回復の工事に必要な日数を業者に聞き、着工日を置く 3. 着工日より前に、買取の引き取り日を置く 4. 引き取り日より前に、査定日を置く 5. 査定日より前に、仕分けを終える 6. ライフラインの停止は、引き取りが終わった後に置く
この6段を後ろから埋めるだけです。 前から埋めると、必ず買取が押し出されます。
どこまでが自分の負担なのかは、先に確認しておく
原状回復の範囲は、契約書の特約で決まっている部分が大きい領域です。住居の退去と同じ感覚でいると、想定より広い範囲を求められることがあります。見積もりを取る前に、契約書のどこを見るのかは店舗の原状回復で「経年劣化」は借主負担になるのかにまとめました。
負担範囲が変われば、売る・残す・捨てるの仕分けも変わります。 順番としては、契約書の確認が最初です。
よくある質問
Q. もう原状回復の見積もりを取ってしまいました。今から買取は間に合いますか。 A. 工事の着工前であれば、間に合うことが多いです。 ただし、見積もりから機器の撤去分を減らしてもらえるかは業者との交渉次第です。契約前なら早めに伝えてください。
Q. 買取と原状回復を、同じ業者にまとめられませんか。 A. 両方を扱う業者はあります。 まとめると日程の調整は楽になりますが、買取金額が適正かどうかを比べる相手がいなくなります。 少なくとも査定は他社にも見てもらったほうが判断できます。
Q. リース中の機器はどうなりますか。 A. 所有権がリース会社にあるため、売却できません。 契約内容によって返却・残債の扱いが変わるので、閉店を決めた時点でリース会社へ連絡してください。
Q. 居抜きで次の借り手が決まりそうです。それでも仕分けは要りますか。 A. 要ります。 居抜きで渡せる範囲は交渉で決まり、渡せなかったものは結局こちらで処分することになります。 決まる前提で何もしないでいると、日程が詰まります。
Q. 休業して様子を見る選択肢はありませんか。 A. あります。ただし費用のかかり方も、契約上の扱いも閉店とは別物です。閉店と休業の違いで比べています。
まとめ
- 「見積もり → 工事 → 明け渡し」の順番だと、売れるものが撤去費に化ける
- 買取は原状回復の契約前に入れる。撤去する量が減れば、見積もりの前提が変わる
- 工事の日程を押さえることと、撤去の範囲を確定することは分けられる
- 仕分けは売る・譲る・捨てるの3つで十分
- 査定は通電しているうちに、複数社。ライフラインの停止は引き取りの後
- 買取の引き取り日を、工事の着工日より前に確定させる。搬出経路の重複が最も揉める
本記事は、閉店時の作業手順について一般的な流れを整理したものです(確認日:2026-08-09)。契約内容・物件の条件・ビルの規約によって、実際の手順と可能な日程は変わります。 契約書の内容と貸主・管理会社の指示を優先してください。

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