解約予告は「閉めたい日」ではなく「通知した日」から数える
最も多い誤解がここです。解約予告期間は、店を閉めた日からではなく、貸主に解約を通知した日から起算します。6ヶ月前予告の契約で、営業を止めてから通知した場合、その後の6ヶ月分の賃料が発生するのが原則です。
つまり、閉店の意思が固まった時点で最初にやるべきは通知であり、片付けや業者探しではありません。逆算すると次のようになります。
| 予告期間 | 通知のタイミング | 遅れた場合に発生するもの |
|---|---|---|
| 3ヶ月前 | 退去希望日の3ヶ月以上前 | 不足分の賃料、または予告に代わる違約金 |
| 6ヶ月前 | 退去希望日の6ヶ月以上前 | 同上(額が大きくなりやすい) |
契約によっては、予告期間に満たない場合に「予告期間に相当する賃料を支払えば即時解約できる」という定めが置かれています。この条項があるかどうかで、閉店の自由度が大きく変わります。
通知は口頭で済ませない——解約の意思表示は、契約書で書面によることが求められているのが一般的です。「オーナーに電話で伝えた」だけでは通知日が確定せず、後から起算日で揉めます。書面の日付が、そのまま数百万円の差になり得ます。
敷金・保証金は、二段階で減る
「保証金を10ヶ月分入れているから、退去時にまとまった額が戻る」と考えていると、資金計画が狂います。戻る額は次の順で決まります。
| 段階 | 差し引かれるもの | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 1 | 償却・敷引き(契約時点で返還しないと定めた分) | 契約書の償却条項 |
| 2 | 原状回復費(工事費の精算) | 原状回復の範囲を定めた条項 |
| 3 | 未払賃料・共益費などの残債 | 直近の請求書 |
店舗の賃貸借では、保証金の一定割合を返還しないとする償却(敷引き)の特約が置かれていることが珍しくありません。この分は原状回復とは無関係に、契約の時点で戻らないと決まっている部分です。
その上で原状回復費が差し引かれます。工事の範囲によっては保証金を超過し、追加で請求されることもあります。範囲の考え方は飲食店の原状回復はどこまで?で詳しく扱っています。
確認する順番
契約書を開いたら、次の順で読むと必要な情報が最短で揃います。
| 順番 | 確認する条項 | 分かること |
|---|---|---|
| 1 | 解約予告期間・通知方法 | いつまでに、どう通知すべきか |
| 2 | 中途解約・違約金の定め | 期間内解約でペナルティがあるか |
| 3 | 償却・敷引きの割合 | そもそも戻らない額 |
| 4 | 原状回復の範囲(スケルトン返しか) | 工事費の規模 |
| 5 | 造作譲渡・転貸の可否 | 居抜きという選択肢が使えるか |
とくに5番目は見落とされがちです。貸主の承諾なしに造作を譲渡できないと定められていれば、居抜きでの出口は最初から使えません。原状回復一択になるなら、工事費を前提に資金を組む必要があります。判断の分かれ目は居抜きで売るか、原状回復して返すかで整理しています。
定期借家契約は「途中でやめられない」ことがある
契約書の種類も確認してください。定期建物賃貸借契約(定期借家)の場合、期間満了で終了する代わりに、中途解約が原則としてできない、あるいは残期間の賃料相当額を負担する定めになっていることがあります。
普通借家のつもりで「予告さえすれば抜けられる」と考えていると、残り期間分の賃料という想定外の負担が発生します。契約書の表題と、期間・更新に関する条項を必ず確認してください。
連帯保証人・保証会社への影響も確認を——解約に伴う未払いが残ると、連帯保証人に請求が及びます。個人保証を付けている場合、閉店後の精算が終わるまで責任は続きます。誰にどこまで影響するかを、通知の前に把握しておいてください。
予告期間を「空家賃」で終わらせない
予告期間の数ヶ月は、多くの場合賃料が発生し続けます。この期間をどう使うかで、閉店の総額は変わります。
| 期間の使い方 | 効果 |
|---|---|
| 居抜きの買い手を探す | 造作譲渡料が入れば、賃料負担を相殺できる |
| 厨房機器・什器の売却を進める | 処分費が減り、売却分が現金として戻る |
| 原状回復の相見積もりを取る | 工事費を比較する時間が確保できる |
| 在庫・食材を売り切る | 廃棄コストを抑えられる |
賃料を払っているあいだは、まだ店舗を使う権利があるということです。設備が設置された状態で買い手や査定を受けられるのはこの期間だけなので、通知を出したらすぐに動き始めるほうが有利になります。厨房機器や什器は、処分費を払って捨てるか、売って現金にするかで収支が変わります。値が付く物と付かない物の見分け方は厨房機器・店舗備品の買取にまとめています。
まとめ
閉店の資金計画は、解約予告の起算日と保証金のうち実際に戻る額の二つが決まらないと立ちません。予告は通知した日から数え、書面で出す。保証金は償却と原状回復費を引いた残りが戻り、場合によっては不足分を追加で払う。この前提を先に確定させてから、原状回復や買取の手配に進んでください。順番を逆にすると、想定外の賃料と工事費が同時に来ます。
閉店手続き全体の流れは飲食店の閉店手続き完全ガイド、費用の全体像は閉店にかかる費用の総額で確認できます。
本記事は一般的な情報の整理です。解約予告期間・償却の有無・原状回復の範囲・中途解約の可否は、個別の賃貸借契約書の定めが優先されます。契約内容の解釈や交渉については、弁護士等の専門家へご確認ください。

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