飲食店の廃業と倒産はどう違う?備品を売る前に必ず知っておくこと

店じまいで什器を片付ける飲食店の外観
飲食店をたたむとき、「廃業」と「倒産」は同じことのように語られがちです。しかし店の備品を売っていいかどうかという一点で、両者はまったく違います。廃業なら自由に売れる厨房機器が、倒産が視野に入った瞬間、勝手に売ると問題になり得る財産に変わります。この記事は、その分かれ目を経営者が判断できるように整理したものです。法的な手続きの要否や進め方は個別事情で変わるため、最終的な判断は必ず弁護士等の専門家に相談してください 要確認
目次

廃業と倒産の違い(一覧)

廃業 倒産
状態 債務を支払える 支払不能・債務超過
やめる理由 自分の意思(後継者不在・不採算・体調など) 続けられない(資金が尽きた)
法律用語か 手続きの名前ではない 法律用語ではなく、状態を指す通称
主な進め方 各種届出・清算 破産・民事再生などの法的整理/私的整理
備品を売れるか 売れる(自分の資産) 自己判断で売ってはいけない
まず相談する先 税理士・司法書士 弁護士
「倒産」は、実は法律上の手続きの名前ではありません。支払いができなくなった状態の通称で、その状態を法的に処理する手続きが破産・民事再生・特別清算などです。ニュースで「倒産」と報じられる会社が、実際には破産手続に入っている、というのはこのためです。

廃業とは:払える状態で、自分の意思でやめる

廃業は、借入や買掛金を支払える状態のまま、経営者の判断で事業を終わらせることです。飲食店の場合、後継者がいない、家賃や人件費の上昇で採算が合わない、体力的に続けられない、といった理由が代表的です。

この場合、店の厨房機器・什器・在庫はすべて自分(または自社)の資産です。売る、譲る、処分する ── どう扱うかは経営者が自由に決められます。むしろ、売却して現金化し、残った借入の返済や従業員への支払いに充てるのは、まっとうな進め方です。

手続き面では、保健所への廃業届、税務署への届出、法人なら解散・清算の登記などが必要になります。順序と一覧は飲食店の閉店手続き完全ガイドにまとめています。

倒産とは:払えなくなって、続けられない

一方の倒産は、支払いが回らなくなった状態を指します。手形が落ちない、家賃や仕入代金を払えない、給与を遅配している、といった段階です。この状態を法的に整理する主な手続きは次のとおりです。

破産

裁判所に申し立て、選任された破産管財人が財産を換価(売却して現金化)し、債権者に公平に分配する手続きです。法人は手続きの終了とともに消滅します。飲食店の倒産では最も多く選ばれる手続きとされます。

民事再生

事業を続けながら債務を圧縮し、再建を目指す手続きです。一定の収益力が残っていることが前提になるため、小規模な飲食店で使われる例は多くありません。

私的整理(任意整理)

裁判所を通さず、債権者と個別に話し合って支払条件を調整する方法です。柔軟な反面、全債権者の同意が要るため、まとまらないことも少なくありません。

最重要:倒産が視野に入ったら、備品を売る前に止まる

ここがこの記事で最も伝えたい部分です。

破産などの法的整理を検討している段階で、経営者の判断だけで店の資産を売却・処分してはいけません。
支払不能に近づいた局面では、店の財産は「経営者のもの」というより債権者全体に対する引当という性格を帯びてきます。この段階での資産処分は、後の手続きで問題として扱われるおそれがあります。

具体的には、次のような行為が問題になり得ます。

  • 相場より安く売る ── 財産を不当に減らしたとみなされ、破産管財人によって取引の効力を否定される(否認される)ことがあります
  • 売った代金を特定の債権者だけに払う ── 債権者は平等に扱うのが原則で、一部だけを優遇する弁済は問題視されます
  • 売った代金を隠す・申告しない ── 財産隠しとみなされれば、免責が認められないなど深刻な不利益につながり得ます
  • リース品や所有権留保付きの機器を売る ── そもそも自分のものではないため、契約違反にとどまらない問題になります

「従業員に給料を払いたかった」「取引先に迷惑をかけたくなかった」という善意から動いたケースでも、結果として不利益を招くことがあります。動機が誠実であるかどうかと、手続き上問題になるかどうかは別です。

では、何もできないのか

いいえ。査定を受けて、いくらになるかを把握しておくこと自体は問題ありません。むしろ、資産の価値がわかっていれば、弁護士に相談する際の判断材料になります。止めるべきなのは売却して現金化する行為であって、価値を知ることではありません。

実務上の順番はこうなります。

  • 店の資産にどれくらいの価値があるか、査定を取って把握する
  • その情報を持って弁護士に相談する
  • 売却してよいか、いつ、どういう形でかを、弁護士の指示に従って決める

自分はどちらなのか、を見分ける

経営者自身が「うちは廃業なのか倒産なのか」を判断しづらいのが、この問題の難しいところです。次のような状態にあてはまるなら、廃業のつもりでも、まず弁護士に相談したほうが安全な段階に来ている可能性があります。

  • 家賃・仕入代金の支払いを待ってもらっている
  • 給与の支払いが遅れている、または遅れそう
  • 借入の返済をリスケジュール(条件変更)している
  • 店をたたんでも、借入や買掛金が残る見込みがある
  • 税金や社会保険料を滞納している
  • 個人保証をしている借入がある
逆に、店を閉めて備品を売れば、借入も買掛金も清算できて手元に残るという見通しが立つなら、それは廃業です。この場合は、備品をいかに高く現金化するかが実利に直結します。

相談先の選び方

状況 相談先
支払える見込みがあり、たたむ手続きを知りたい 税理士(税務)・司法書士(登記)
払えない・払えなくなりそう 弁護士
費用が心配で弁護士に行きにくい 法テラス、各地の弁護士会の法律相談
事業の継続・再生を模索したい 中小企業活性化協議会、商工会議所

「弁護士に相談するほどではない」と考えて先延ばしにするうちに、選べる選択肢が減っていくのが、この分野で最も多いパターンです。相談は早いほど手が打てます。

よくある質問

廃業と閉店は違うものですか?

「閉店」は店舗を閉めること、「廃業」は事業そのものをやめることを指すのが一般的です。複数店舗のうち1店だけ閉める場合は閉店ですが、事業は続くので廃業ではありません。届出の要否が変わるため、区別しておくと整理しやすくなります。

破産すると、厨房機器はどうなりますか?

破産手続きでは、破産管財人が財産を換価して債権者に分配します。厨房機器も対象になり得ますが、具体的な扱いは事案によって異なります。経営者が自分で売り先を決めるのではなく、管財人の管理下で処理されると理解しておいてください。詳細は弁護士にご確認ください。

倒産しそうですが、査定だけ受けても大丈夫ですか?

査定を受けて金額を把握することは問題ありません。売却の実行を弁護士の判断より先に進めないでください。当サイトの無料査定・お問い合わせもご利用いただけますが、その旨をお知らせいただければ前提を踏まえてご案内します。

リース中の機器は売れますか?

売れません。リース中の機器の所有権はリース会社にあります。廃業・倒産いずれの場合も、まずリース会社に連絡して残債と解約条件を確認してください 要確認

個人保証をしている借入があります。店をたためば終わりますか?

終わりません。法人が消滅しても、経営者個人が保証した債務は個人に残ります。個人の債務整理まで含めた検討が必要になるため、弁護士に相談してください。近年は「経営者保証に関するガイドライン」に沿った対応が取られる場合もあります。

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。手続きの選択や資産の扱いは、債務の額・保証の有無・契約内容によって結論が変わります。判断の前に必ず弁護士等の専門家にご相談ください。

当サイトは飲食店の閉店に関する情報メディアで、買取・回収は提携先へのお取次ぎとなります。備品の価値を把握しておきたい段階であれば、無料査定・お問い合わせフォームからご相談ください。閉店手続き全体の流れはこちらのガイドにまとめています。

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