閉店を決めたあと、次に迷うのが「何月何日に閉めるか」です。早く閉めれば赤字は止まりますが、契約や人の都合で、決めた日に閉められないことがあります。
この記事は、個人事業で営む飲食店を前提に、閉店日を決めるときに数える3つ——①賃貸借契約の解約予告 ②従業員の解雇予告 ③年をまたぐかどうか——を順に整理します。法人の店は、事業年度や解散の手続きで考え方が変わるので、税理士・司法書士に確かめてください。
先に結論
- 閉店日は「閉めたい日」から決めるのではなく、いちばん遅く来る期限から逆に数えて決める
- ①解約予告:契約書に書かれた予告期間より前に、貸主へ伝えておく必要がある
- ②解雇予告:従業員を解雇するなら、労働基準法第20条で少なくとも30日前の予告。予告しないなら30日分以上の平均賃金を払う
- ③年をまたぐか:個人事業は暦年(1月〜12月)で所得を計算する。1月に閉めると、前の年の分と、閉めた年の分で確定申告が2回になる(その年に所得があれば)
- 日付が決まったら、機器の査定は公表の前に。引き取りは引き渡し日から逆算して
① 賃貸借契約の解約予告|まず契約書の期間を数える
店舗の賃貸借契約には、解約を何か月前までに伝えるか(解約予告期間)が書かれていることがあります。この期間は契約ごとに違うので、「店舗なら◯か月」と決めつけず、契約書の解約条項を読むところから始めます。
- 予告期間が長い契約では、今日伝えても、閉店日(明け渡し日)はその期間のあとになる
- 予告期間に足りないまま退去すると、残りの期間の賃料を求められることがある
- 原状回復の工事期間も、明け渡し日までに収める必要がある
解約予告と、敷金・保証金がいくら戻るかの関係は店舗の解約予告は何ヶ月前?にまとめています。
② 従業員の解雇予告|少なくとも30日前
従業員を雇っている店では、閉店に合わせて解雇する場合、労働基準法第20条第1項が次のように定めています。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
同じ条の第2項には、予告の日数は、1日について平均賃金を払えば、その日数だけ短くできるとあります。たとえば20日前に予告するなら、足りない10日分の平均賃金を払う、という形です。
つまり、閉店日の30日前までに従業員へ伝えられるかが、日付を決める条件のひとつになります。伝え方と手続きの順番は飲食店の閉店、従業員への伝え方と解雇予告を見てください。
③ 年をまたぐか|12月に閉めるか、1月に閉めるか
個人事業の所得は、1月1日から12月31日までの1年(暦年)で計算し、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告します(所得税法第120条)。
ここから、閉店する月によって申告の回数が変わります。
| 閉店する時期 | 確定申告 |
|---|---|
| 年内(例:12月)に閉める | その年の分を、翌年3月15日までに1回 |
| 年明け(例:1月)に閉める | 前の年の分を3月15日までに。さらに、閉めた年の分(1月までの所得など)を、その翌年の申告期間に |
廃業の届出(個人事業の開業・廃業等届出書)も、2026年1月1日以後の廃業は、廃業した年分の確定申告期限までに出せばよい形になっています(所得税法第229条)。
年明けに閉めると、数週間の営業のためにもう1年分の申告が残ります。どちらが得かは、その年の売上・経費・設備の売却の有無で変わるので、日付を決める前に税理士か税務署に相談するのが確実です。廃業の年にやる税金の手続きは飲食店を閉めたあとの税金の手続きにまとめています。
3つを並べて、閉店日を決める
- 契約書の解約予告期間から、いちばん早く明け渡せる日を出す
- 従業員がいるなら、そこから30日以上前に伝えられるかを確かめる
- その日が年末か年明けかを見て、申告の回数を確かめる
- 3つのうちいちばん遅い日を基準に、閉店日(最終営業日)と明け渡し日を決める
日付が決まったあとの段取りは引き渡し日から逆算するスケジュールの立て方、かかる費用の全体は飲食店の閉店にかかる費用の総額を見てください。
日付を決めたら、先に動くこと
- 機器の査定:閉店を公表する前に査定を取り、引き取りは伝えたあとに。順番は閉店時の買取は「査定は公表の前、引き取りは伝えた後」
- お客様の前払い:回数券・チャージ残高・予約金を閉店日の前に集計する。閉店する店に残る「お客様の前払い」の片付け方
- お知らせ:閉店日が決まってから、お客様・取引先へ。飲食店の閉店お知らせの書き方
よくある質問
閉店を決めたら、すぐ閉めてもいいですか
閉めること自体はできますが、契約の解約予告期間と、従業員への解雇予告(少なくとも30日前、または不足日数分の平均賃金)の扱いが残ります。先に契約書と雇用の状況を確かめてください。
12月に閉めたほうが得ですか
申告の回数は減りますが、得かどうかは売上・経費・設備の売却などで変わります。日付を決める前に税理士か税務署に相談してください。
法人の店も同じですか
法人は事業年度で決算をし、解散・清算の手続きがあるので、この記事の③は当てはまりません。税理士・司法書士に確かめてください。
まとめ
- 閉店日は、解約予告・解雇予告・年をまたぐかの3つのうち、いちばん遅い期限から決める
- 解雇予告は労働基準法第20条で少なくとも30日前(不足日数は平均賃金で短縮できる)
- 個人事業は暦年で申告。1月に閉めると申告がもう1回残る
- 日付が決まったら、機器の査定は公表の前に
閉店で残る厨房機器・什器は、処分する前に買取の見積もりを取ると、処分費を減らせることがあります。当サイトでは、提携先へのお取次ぎでご相談を受け付けています。
※ 条文は2026年10月18日に e-Gov 法令検索で確認しました(労働基準法・所得税法)。法令や手続きは改正されることがあります。最新の内容は所管の行政機関・専門家にご確認ください。
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